メンツか経済か。香港デモ対応で天安門事件を挙げた米国の真意

 

それは、事態の鎮圧に人民解放軍が投入され、戦車の前に立つ青年の姿が繰り返しテレビに映し出されるたびに、国際資本が中国から逃げ出したからです。これは、ようやく経済建設が軌道に乗り始めた中国にとっては致命的と思えるような動きでした。

あわや、国際資本が全て中国から手を引くかと思われた頃、事態が沈静化に向かい始め、中国に踏みとどまった松下電器とフォルクスワーゲンという2つの世界企業が微動だにしていない姿を見て、国際資本は中国に戻り始めたのです。いまでも中国は、パナソニックとフォルクスワーゲンを特別扱いで厚遇していますが、その恩義があるからなのです。

直後、中国はデモ隊や暴動の鎮圧に必要な武装警察を強化し、今日に到っています。その武装警察が深圳に集結し、訓練の様子まで外国メディアが報道するがままにしているのは、その圧力だけで香港の群衆が行動にブレーキを掛け、事態が沈静化に向かうのを第1の目的としているのは間違いないところです。

AFPによれば、中国政府系メディアは16日、天安門事件を繰り返すことはないとする社説を掲載したそうです。

中国が香港に介入しないで済ますには、林鄭月娥行政長官の退任など群衆が納得する条件が必要です。それは林鄭氏を引き立ててきた習近平国家主席の判断ミスを認めることにつながり、中国共産党にとっては愉快ではない条件ですが、「それくらいしないと天安門の二の舞になるけど、それでもいいの?」と注意を喚起しているのがボルトン補佐官の発言だということですね。

この編集後記がお目にとまる頃、事態がどうなっているか予測はできませんが、双方がマスコミとSNSを駆使して情報戦を繰り広げるなか、流血を見ないで事態が沈静化することを願わずにはいられません。(小川和久)

image by: Jimmy Siu / Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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