N国党が本当に「ぶっ壊す」べき、政府広報に成り下がったNHK

 

NHKを辞めた立花氏はパチンコ指南を手始めにユーチューバーとしての才能を開花させた。いつパチンコの腕を磨き、話術を鍛えたのかは定かではない。やがて、NHK視聴料の支払い拒否を勧め集金人を追い返す方法を伝授するようになり、どんどん再生回数が増えて、ユーチューブの広告料収入が1,000万円をこえるほどに。

誰だって、NHKの視聴料を払わなくて済むのなら、そうしたい。とくに、報道部門で公共放送の役割を果たしていない昨今のNHKには、絶望感さえ覚える。たとえば、政治部、岩田明子記者の安倍政権べったりな報道にはは辟易するばかりだ。

モリカケ問題でも、NHKの安倍忖度はひどかった。

加計学園の獣医学部新設をめぐる文科省のメモ文書について、最初に前文科省事務次官、前川喜平氏にインタビューしたのはNHKの社会部だったのに、その映像は放送されなかった。文書を入手したのもNHK社会部が一番手だったが、「官邸の最高レベルが言っていることの部分が消されて放送された

NHK報道局長、小池英夫氏の指示だという見方もあれば、NHK会長賞を受賞し、局内で影響力を増している岩田氏が安倍官邸の怒りを避けるため、そのネタを握りつぶすよう小池局長に働きかけたのでは、と推測する向きもあった。

マスメディアは戦前のように国家権力が暴走することのないよう、市民の側から監視し、そういう意味において中立公正な情報を提供するのが仕事である。

国民から受信料を徴収して経営するNHKは、まさしく市民社会の「公共」を守るために存在するのであり、国家権力に対してつねに批判精神を持っていなくてはならない

戦後のNHKは公共放送として政府から自立するために1950年、アメリカにならって、民間人で構成する独立行政委員会「電波監理委員会」を創設した。にもかかわらず、サンフランシスコ条約が発効すると同時に郵政省に統合されてしまった。つまり再びNHKは政府の管理下に置かれることになった。

こうした制度改悪が今のNHKの姿につながっているのだ。政府から独立した公共放送をいま一度めざすために、国家との関係をきちんと見直すべきなのにそれをせず、報道部門は安倍政権への忖度のかたまりになってしまった。

視聴料など払いたくはない。だけど他の人が支払っているのに、自分だけが拒否するのはアンフェアではないか。だから、今のようなNHKなら要らないと思いつつも、払っているのである。

NHKのテレビ放送をスクランブル化して、契約世帯だけが視聴できるシステムには、それなりの合理性があるのだから立花氏にはひたすら実現に邁進してもらいたいものだが、もともと彼のNHK批判には、反韓極右的な思想が根を張っている。ユーチューブで、NHKが電通に乗っ取られているゆえに反日放送をしているなどと、意味不明のことを言うのだから、あきれるばかりだ。

NHKは左傾化しているという理屈で、経営委員の顔ぶれを入れ替え、籾井勝人氏のような人物を会長に据えたのが安倍政権である。その後は、ときおり秀逸なドキュメンタリー番組が登場する以外、報道とは名ばかり政府広報と言って差し支えない異常事態が続いている。

リベラルからみればあきらかにNHKは右傾化しているが、立花氏や安倍首相の目には左傾化に映るらしいのである。

両者のそうした思想的親和性を見ても、N国が議席数を増やして安倍政権にすり寄り、憲法改正発議に向けたの協力をするかわりにNHKのスクランブル化を実現させようという魂胆がありありなのだ。

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