本当は貰えるのかも。「雇用保険」失業給付の意外な落とし穴

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受給されるとなると大きな助けになる雇用保険の失業給付金ですが、その条件を満たしていないと諦めてしまっている方も多いようです。今回の無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』では、見落とされがちな「失業給付受給要件の緩和」の条件について解説しています。

失業給付受給要件の緩和

新米 「ん~、それは残念ですねー。2年間に出勤日期間が11ヵ月しかなかったら失業給付はもらえませんねー」

ようやくあまり緊張せずに電話で話せるようになった担当のお客様ができてきた僕は、お客様にそう説明して電話を切った。すぐ横で…というわけではないが、自席で僕のやりとりを気にしてくださったのだろう、深田グループリーダーからすぐさま質問が飛んできた。

深田GL 「新米くん、その人は退職直前は病気か何かで欠勤だったの?勤続年数は2年以上ないの?

新米 「いえ、定年過ぎても頑張ってくださった方って聞いてますから、勤続年数は、そこそこお有りだと思いますが…」

深田GL 「それなら、2年間にその前の期間も足すことできるんじゃないかい?

新米 「…???」

深田GL 「退職前の2年間に、被保険者期間が通算して12ヵ月以上あること。それが満たせないんだろ?」

新米 「はい、11日以上出勤した月が11ヵ月しかなくて、1ヵ月足りないんです。何か特例がありましたっけ?」

深田GL 「うん、受給要件の緩和が認められればね。たとえば、病気やけがで30日以上給与を受けることができなかった場合なんかもそうだよ。今回、まさにそうじゃないのかい?」

新米 「え?病気で休職していたので、その理由にピッタリですけど…」

深田GL 「じゃ、失業給付は受けられるんじゃないかい?病気やケガなどの理由によって継続して30日以上給与を受けることができなかった場合は、4年を上限にその期間を加算できるんだよ。その期間、給与が受給できなかった証明の添付がいるけどね」

新米 「今回の場合は、何が証明になるんですか?」

深田GL 「傷病手当金の申請書類の控えがあればいいね」

新米 「あ、そういう書類を添付すれば良いんですね」

深田GL 「そうだよ。病気やけがは、業務上、業務外は問わないね。他には、事業所の休業産前産後期間や3歳未満の育児期間や親族の介護期間も該当するケースがあるよ」

新米 「結構範囲が広いんですね」

深田GL 「他にも、海外出向やグループ会社への取締役としての出向なども該当するよ」

新米 「これは、知っておかないといけませんね」

深田GL 「うん、これは、君が新人のときにテキストとして渡した『雇用保険事務手続きの手引き』の離職証明書の記入例の後ろの方にも載っているよ。イレギュラーなケースとはいえ、社労士としては、基礎にあたる部分だから、今回、経験したら忘れないで覚えていてほしいなぁ。また、テキストを読んで復習しておいてくれないか」

新米 「わかりました。A社さんにお詫びして訂正のお電話いれます」

所長 「そうだね。頼むよ」

新米 「あれっ、所長、いつから聞いていたんですか?」

所長 「さっきからだよ。ついでに話しておこう。少し前にはこんなケースもあったよ」

新米 「え?どんな…?」

所長 「D社さんからのご相談なんだ。ご友人が会社の休職制度を利用して2年間海外留学をされていて、退職したそうなんだ。で、いざ失業給付をもらおうと思っていたら、ダメだと言われたとのこと。どうしようもないんでしょうか?っていう質問さ。君ならどう答える?」

新米 「え?さっきの受給要件の緩和に該当しましたっけ?」

所長 「残念ながら、このケースは該当しないんだ。大企業が良かれと思って、ボランティア休暇や留学休暇など2年にも渡る長期間の休暇制度をつくってくれるのは、従業員にとっては有難いことだと思うけど、ちょっと考えものだね」

新米 「会社命令の有給の出向なら出勤カウントできるけれど、無給の休暇の場合はカウントできないってことですよね」

所長 「そうなんだ。このケースは、休暇制度が1年間なら救われた、または、2年の休暇制度でも復帰してから1年以上出勤したら失業給付は受給できる。もっともこの制度も本来は、復帰を前提に企業はつくっているはずだから、復帰しない場合のリスクを休暇取得の前最低は退職の前に従業員に伝えるべきだね」

深田GL 「確かに…。企業側も復帰しない人に対しての休暇制度なんて考えてなかっただろうし、想定外だったんでしょうね」

新米 「だから、リスクの説明までできていない、そもそもそういうリスクがあることも気づいていらっしゃらなかったかもですね」

所長 「そうだね。その隙間を社労士が埋められるといいね」

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【著者】 イケダ労務管理事務所 【発行周期】 週刊

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