【書評】台風だけじゃない。首都直下地震が起こす地震洪水の恐怖

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必ず起こるとされる首都直下地震が引き起こす「地震洪水」をご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが紹介しているのは、そんな地震洪水についても触れられている一冊。凄まじい被害をもたらすというその洪水に対し、為すすべはあるのでしょうか。

偏屈BOOK案内:土屋信行『水害列島』

612FVvT183L水害列島
土屋信行 著/文藝春秋

首都直下地震」はいつ起きてもおかしくない。だれもが、いずれは来ると受けとめている。内閣府でも東京都でも、それぞれ「首都直下地震」被害想定を公表している。しかし、地震によってもたらされる「地震洪水」については、知る人はほとんどいない。公の被害想定には出て来ない言葉だからであろう。

この本では、首都東京が直下型地震によって引き起こされる「地震洪水」の被害について、具体的に描いている。「地震洪水」は突然やってくる。東京の周囲を取り巻く河川堤防は、大半が液状化地盤の上に建設されており地震により同時多発的に破壊される。そのためゼロメートル地帯には何の前触れもなく、大規模な「地震洪水」が同時多発し、凄まじいまでの被害が発生するという。

「地震洪水」の中で倒壊家屋からの救助は不可能、瓦礫に拘束された人々が氾濫流で死に至る。多くの負傷者は逃げられず死ぬ。これらは再現シミュレーションでほぼ予測できる。しかし、まったく予想不可能なのが地下鉄内浸水による被害の想定だ。ラッシュアワーに地震が重なれば、膨大な犠牲者が発生する。同時多発的に発生した堤防破壊による浸水は、あらゆる低い所に浸入する。

地下鉄は地震時に脱線しない限り走行を続け、一番近い駅で停車して乗客を降ろす。しかし、停電や信号の故障、運行情報通信の途絶など、様々な不測の事態が起きる。東京メトロ、都営地下鉄、JR東日本横須賀・総武快速線、りんかい線、東急線、京成線など、下町低地の地下トンネルに閉じ込められたら……。

地下トンネルへ電車が入っていくところを「坑口」という。ここから氾濫水が浸入しないように、完全に坑口を塞ぐ「防水壁が準備されている。氾濫水の上流側で防水壁を完全に閉じられれば、その地点より下流側の乗客は安全である。だが、突然やって来る「地震洪水」の場合、坑口閉鎖や防水壁の遮断が間に合わない。なにしろ、防水壁を閉じるまで諸々の処理で1時間を要する。

いきなり来る「地震洪水」は、事前には何もできない。トンネルへの氾濫水の浸入時間は駅によっても違う。防水壁の使用は、閉じ込めによる一定の犠牲者を発生させる。多数を助けるために犠牲者が出ることを覚悟して、地震発生後防水壁を閉じるマニュアルは作ることができるのか。犠牲者の数は想定不可能。23区内の移動者は約120万人、鉄道内滞留者は約28万7,000人である(2016年の想定)。

首都直下地震による津波は、荒川左岸(江戸川区)では浸水深は約4mで襲来する。荒川右岸(江東区)では浸水深は約5.5mにまで達する。最終的な死者・行方不明者は何人か?シミュレーションによれば、地震の揺れによる直接的な死者と、その後の「地震洪水」による氾濫流により、負傷者の救出が不可能になるため、死者行方不明者は約35,000人~約81,000人と推定している。

災害は現実に起こることである。日本の首都東京は、自然災害リスクが世界一高いと指摘されてから、ずいぶん年数が経過している。「首都直下地震」は多くの人は殆ど「聞きたくない」の心境だと思うが、それによってもたらされる「地震洪水」を知る人はいない。この本で初めて知った。こんな重大なことを、内閣府も東京都も想定しているのか、いないのか?どうなんだ。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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