直接触れなくても「誘っただけ」はセクハラで解雇されるのか?

 

いかがでしょうか。ここで実務的に注意すべき点が2点あります。まず1点目が会社として日頃からセクハラ防止などの具体的な対策を行うことが重要ということです。この裁判でも「セクハラを防止するように会社が以前から取り組んでいた」ことが、解雇が認められた1つの要因になっています。そういった対策をしているといざというときには会社にとって有利になります。

次に2点目が「セクハラで解雇もありうると、社内に周知することです。言うまでもありませんがセクハラ対策で一番大切なのは「防止すること」です。起こった後に懲戒処分をどれだけ厳しくしたところでセクハラを受けた社員の傷が癒えるわけでも被害が無かったことになるわけでもありません。

であれば「管理職がセクハラを行ったら解雇もありうるという裁判例もある)」ことを社内研修などで周知し、そもそもセクハラが起こらない環境を作ることが大切でしょう。

実際に問題が起きてしまってからでは時間も手間も(そしてときにはお金も)かかります。また、場合によっては社員という貴重な戦力を失うことにもなりかねません。セクハラ対策は事前予防が一番なのです。

※ ちなみに私がよくご相談をいただく内容で「懲戒処分をどの程度行うべきか(もしくは、どの程度行っても大丈夫か)」というのがあります。そこで、今回の裁判のように管理職であればセクハラをした場合にいつでも解雇ができるかというとそれは状況にもよります

今回の裁判でも「(この室長は)懲戒処分歴がなく、会社からも能力に対して高い評価を受けていたことからすると解雇はいささか酷であるとの感をもたないではない」とも判断されています。

場合によっては懲戒処分が重過ぎると判断され会社が裁判に負けてしまうということもありえます。懲戒処分特に解雇はその判断が非常に難しいのです。

そういったリスクも考えるとやはり事前対策が大切と言えるでしょう。

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【社員10人の会社を3年で100人にする成長型労務管理】 社員300名の中小企業での人事担当10年、現在は特定社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツを「わかりやすさ」を重視してお伝えいたします。 その知識を「知っているだけ」で防げる労務トラブルはたくさんあります。逆に「知らなかった」だけで、容易に防げたはずの労務トラブルを発生させてしまうこともあります。 法律論だけでも建前論だけでもない、実務にそった内容のメルマガです。

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【著者】 特定社会保険労務士 小林一石 【発行周期】 ほぼ週刊

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