新型肺炎の帰国者対応職員を自殺に追い込んだ、外野の心ない罵声

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新型肺炎が猛威を振るう武漢からの帰国者対応に当たっていた内閣官房の男性職員が、2月1日、死亡しました。警察は自殺と見て調べを進めていますが、新型肺炎の対応現場への外野からの「心ない批判」も無関係ではないようです。健康社会学者の河合薫さんは今回、自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、現場はベストを尽くしているとした上で、このような状況下では他人を批判するのではなく、未知の病から自分を守ることに専念すべしと記しています。

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2020年2月5日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

現場を追いつめる心ない批判

世界保健機関(WHO)が、感染が急速に拡大している新型コロナウイルスによる肺炎について、国際的な公衆衛生上の緊急事態を宣言した2日後、内閣官房の37歳の男性職員が亡くなりました。

男性は1月31日から帰国者の受け入れ業務にあたっており、中国・武漢から緊急帰国した日本人の滞在先となっている国立保健医療科学院の建物から飛び降りたと報じられています。

関係者によると、男性は亡くなる前日から泊まり込みで一生懸命受け入れ業務をやっていて、「帰国者の要望や対応に疲れていた」という話しもあるとのこと。今回に限らず、現場で緊急事態に対応する人たちは、実に真面目に身を粉にして働きます。ところが残念なことに、彼らは感謝されることより批判されることの方が多い。長時間労働に加え、仕事上のプレッシャー、過剰な業務、時間的切迫度など、さまざまなストレス要因が重なり、「生きる力」が萎え、過労自殺に追い込まれるリスクが常に付きまとうのです。

亡くなった男性の遺書はなく、警察が当時の状況や動機などを詳しく調べているそうですが、武漢に飛んだチャーター便、その後の滞在のあり方など、SNSではかなり卑劣なバッシングが飛び交っていただけに、やりきれない気持ちです。

個人的な意見を言えば、検疫のやり方やら滞在先やら問題はあったにせよ、比較的日本政府は迅速に動いていると思います。

そもそもチャーター便の運航費用を搭乗者が払うことへの批判が集まっていましたが、「救援機」ではないので基本的には本人負担が前提です。

在中国日本国大使館のホームページに掲載されている、チャーター機で帰国を希望する「搭乗に当たっての留意点」にも、「帰国に際して費用が発生することが想定されます」と記されています。

また、武漢が閉鎖され、政府はチャーター便を飛ばす手配を大急ぎで行い、この時点では帰国後の検査で症状のない人は帰宅させる方針でした。しかし、自民党内部から万全を期すため、特定の場所で待機してもらうべきとの声が強まったのを受け、急遽、滞在場所を確保。そこで政府関係者が、勝浦のホテル三日月に頼み込んだとされています。

当初の予定では帰国する人の数は100人程度。ところが実際には191人で、ホテルには177部屋しかない。

つまり、「相部屋とはなにごとか!」という批判が飛び交いましたが、限られた資源、限られた時間で、苦渋の選択として「相部屋」となり、ウィルス検査の結果、感染者がいることがわかったわけです。

にも関わらず、ホテル関係者に心ない言葉がSNSでは飛び交いました。

時事刻々と感染者や死亡者が増えていることに、恐怖を感じるのは致し方ないことだし、どんなに「手洗いとうがいをすれば大丈夫」と言われても、確実な治療薬がない状況ではパニックになるのも理解できます。

でも、時事刻々と変化する状況に翻弄されるのは、現場の人たちも同じです。その都度ベストと思える決断と行動をとっている。そのことを理解して欲しいです。

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