とまあ、こんなふうに「減収世帯へ30万円」から「一律10万円」へのストーリーは、二階、山口両氏の熱演でケリがついた。誰かがシナリオを書いたのか、それとも、たまたまそうなったのかは、わからないが、「30万円」があまりにも不評だったことに安倍首相が気を揉んでいたのは間違いないだろう。安倍首相自身も「一律給付」論者だったからだ。
さりとて、岸田氏にとりまとめを頼み、汗をかいてもらったいきさつもあり、いったん閣議決定された補正予算案を組み替えるなどという前代未聞のことを、安倍首相自ら音頭をとってやるわけにはいかない。
そこで官邸の密使が動いたとすれば、舞台裏の筋書きとしては面白い。「一律10万円」への転換を、自民党と公明党から強く主張してもらえば総理は了承すると言って、二階氏や山口氏に近づいたとか。
もちろん、いったん決まった予算の組み替えともなると、安倍首相のリーダーシップが問われるのは必至だ。
それでも、2割ほどの世帯しか恩恵にあずかれない「30万円給付」を維持し、コロナストレスに悩む国民の不満を今後膨らまし続けるより、全員に等しく配るほうが政権にとって得策だと思い至っても、いっこうに不思議ではない。
なにしろ、昨今の安倍首相は、いかに「歴史に残る総理」への花道をつくるかに最大の関心を寄せてきたに違いないのだが、その装置としての東京オリンピック開催が危ぶまれ、アベノミクスバブルも崩壊しそうになっているのだ。いくらなんでも、これまでのような強気一辺倒は通用しない。
対策の遅れが数々指摘されながらも、安倍首相がここへきて、新型コロナウイルスから国民を守ることこそ、残された任期中の最大の使命であると気づくなら、まだ、いくらか救いはあるのだが…。
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