新型コロナで別れる明暗。なぜ日本はアビガンを使わせないのか?

 

4月23日、福岡市と九州大学病院、福岡大病院が、アビガンの投与について規制緩和を厚労省に要望した。

医師の判断でアビガンが使えるようにしてほしいという内容である。つまり、医師の判断だけではアビガンが使えないのが現状なのだ。

周知のとおり、アビガンは、富士フイルム富山化学が開発した新型インフルエンザ治療薬である。新型コロナの薬としては治験段階にあり、治療にあたる病院が国立国際医療研究センターの「観察研究」に参加し、データを提供するというかたちで、新型コロナの患者に投与している。

しかも、医師が投与するためには患者の希望、同意とともに、各病院に設置されている倫理審査委員会の承認が必要である。アビガンを一人の患者に処方しようと思えば、そのつど病院の倫理審査委員会を開いてもらい、承認を得なくてはならないのだ。委員会は外部の有識者もメンバーになっている。手続きに時間と手間がかかることが、アビガン処方の足かせになっているのではないだろうか。

アビガンは奇形を生む副作用が懸念されるため、妊婦らには使用できないが、それ以外にこれといって副作用の心配はない。政府には新型インフルの流行にそなえて200万人分の備蓄がある。これを新型コロナに使う場合は、必要とする投与量が増えるため70万人分となる勘定だが、これをさらに200万人分にまで増産する計画だ。

安倍首相は緊急事態宣言をした4月7日の記者会見で、「先生にアビガンを使ってもらいたいと言って、その病院において、倫理委員会において使えるということになっているとすれば、それは使っていただけるようにしていきます」と述べた。

しかし現実にはどうなのだろう。コロナ患者を受け入れている病院のすべてがこの「観察研究」に参加しているのかどうかが、よくわからない。国立国際医療研究センターのサイトで「参加施設情報」という項目を見ると「Under Construction(工事中)」と記されているだけである。

ただし、昭和大学藤が丘病院、静岡市立静岡病院、福井県済生会病院、京都中部総合医療センターなど個々に医療機関が情報をアップしている例もある。以下は静岡市立静岡病院ウエブサイト記載の一部。

当院では「COVID-19に関するレジストリ研究(後ろ向き観察研究)」を行っております。本研究は国立研究開発法人国立国際医療研究センター、地方独立行政法人静岡市立静岡病院「医学系研究等倫理審査委員会」の承認のもとで実施します。

 

〇対象となる方々 COVID-19感染症患者でファビピラビル(筆者註:アビガン)を投与された方

新型コロナの感染が判明し、この「観察研究」に参加していない病院に入院した場合、アビガンの投薬が受けられない可能性がある。安倍首相は「観察研究の仕組みの下、(アビガンを)希望する患者の皆さんへの使用をできる限り拡大していく考えです」と述べているのだ。

できるだけ多くの検査を実施し、患者の軽症段階でアビガン等を投与して回復させる必要がある。そうすれば、重症化する患者が減少し、医療崩壊は防げるはずである。

検査対象を広げると、軽症の入院患者が増えるから医療崩壊につながるという考えはようやく修正され、無症状・軽症者向けの療養施設を確保して検査を増やしていこうという流れになってきたが、いっこうに検査数は増えていない。

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