世界で失業者16億人も。コロナ禍は、先進国も途上国も平等に潰す

 

世界を襲う深刻な食糧危機

そして、新興国でのコロナ渦の拡大と激化は、世界の食糧事情への懸念を増大させています。いわゆる食糧安全保障の危機です。

G20(サウジアラビアが議長国)の農相が先週揃って懸念を表明し、コロナの影響を理由とした食糧の輸出制限を控えるべきとの声明を出しましたが、すでに制限の兆しがあちらこちらで出てきています。

例えば、ロシアとウクライナは(外交・安全保障上では対立していますが)、すでに小麦の輸出制限に乗り出しました。狙いは小麦価格の高騰を食い止め、価格を安定させるためとのことですが、実際には、世界の供給量に大きな変化がないにもかかわらず、心理的な要因もあり小麦の価格は上がっています。また、2007年にも起こったコメの輸出制限(ベトナムなど)という前例もあるように、コメの価格にも影響が出てきていますし(東南アジア諸国経済を締め付け)、鶏肉や鶏卵などもつられて価格が上がってきています。

現時点では、FAO(国連農業機関)やWFP(世界食糧計画)などの発表によると、世界の穀物市場の供給量自体は安定しており、かつ在庫も潤沢にあるとのことですが、この声明がプラスに働く(安心につながる)のは、先進国のみで、途上国については何ら希望につながらないという分析もあります。

WFPの別の報告では、「2020年末には、このままいくとコロナの影響で2億6,500万人が食糧不足に陥る」とのことで、2019年の1億3,500万人の約倍に膨れ上がる予測です。

そして、仮に新型コロナウイルス感染症の拡大の影響が長期化した場合、つまり感染の第2波や第3波に襲われた場合、先進国も悠長なことを言っていられるか微妙です。

ロックダウンの再実施などにより、国内外での移動制限によって農業従事者の確保や農作物の物流網に大きな悪影響が出ることになります。

例えば、アメリカですが、農業労働者の多くをメキシコ人労働者に依存していますが、国境封鎖などによる移動制限の厳格化により、アメリカの大規模農場における農産物・畜産物の生産そのものが大きなリスクに見舞われることになります。

ヨーロッパもよく似た状況になります。中東欧や北アフリカ諸国からの労働者に重度に依存しているEU の農業ですが、コロナの影響で移動が制限されることで、労働者不足が起き、域内での農業生産が立ち行かなくなります。

生産のみならず、輸送とロジスティクスも成り立たないという危機的な状況が農業を襲い、それがそう遠くないうちに食糧安全保障に直結しかねません。

そして、それがそのまま他のセクターにまで広がり、生産・加工・物流(流通)における労働力を確保できなくなり、経済活動がマヒしてしまいます。

日本はどうでしょうか?やっと4月30日に1人当たり10万円の支給や中小企業支援などに充てられる補正予算が可決されましたが、緊急事態宣言の期間の延長不可避となった今、果たして日本経済は成り立っていくのか、個人的には非常に不安です。

では、このような状況に直面して各国の政治そして国際政治はどのように変わるでしょうか。

残念ながらCOVID-19のような世界的な危機に直面しても、各国の政治は変わらないだろうというのが私の見解です。

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