【プロジェクトの進め方】正しいゴール設定法は救急隊員に学べ!

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フェーズごとのゴール設定の仕方

『週刊 Life is beautiful』2015年1月13日号

先日、プロジェクトの進め方についてとても良い議論があったので紹介します。フェーズごとのゴール設定の仕方です。

数ヶ月~数十ヶ月という規模のプロジェクトの場合、幾つかの期間(フェーズ)に区切って進めます。一番の理由は、プロジェクトの進捗状況を確認できるようにすることですが、そのためには各フェーズに達成すべきゴール(マイルストーン)を明確に定めておくことが何よりも大切です。

その際に重要なことは、できるだけ「やるべきこと」ではなく「成し遂げるべきこと」をゴールに設定する事です。

例えば、寄付金集めのパーティを企画しているとしましょう。テーブルあたり600ドルを出してくれるスポンサーを20人集める必要があり、それが一番難しいと分かっているとします。

その際、スポンサーの候補リストを作る、彼らにスポンサーになってもらうようお願いする、などのゴールはマイルストーンとしては不適切なのです。それらのゴールを一つづつ達成して行くことは、一見最終ゴールに向かって近づいている感覚を生み出しますが、それは誤解なのです。

最後になって、全員に断られる可能性もあるあるからです。そうなってから、新たにスポンサー探しをしても間に合いません。

より適しているのは、「まずは5人のスポンサーから確約をもらう」「さらに5人のスポンサーから確約をもらう」と着実に「20人のスポンサーを集める」という最終ゴールに向けて駒を進める事です。

この「やるべきこと」と「成し遂げるべきこと」との違いを理解していない人が多いので、私が良く使うたとえ話は人命救助です。

100人乗りの船が沈んだ時に駆けつけた救急隊員が成し遂げるべきことは、全員の命を救うことです。「水に落ちた人を救命ボートに乗せること」は手段の一つでしかないのです。救命ボートに乗った人が寒さで凍え死んでしまったら何の意味もないのです。

どの人を先に救命ボートに乗せるべきか、弱っている人をヘリコプターで陸まで輸送するとか、元気そうな人にはとりあえず浮き輪を与えておくなどの救命ボート以外の選択肢も考慮した上で最適の方法を選び出して100人の命を救うのが救急隊員の仕事なのです。

 

『週刊 Life is beautiful』2015年1月13日号
著者/中島聡
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。 NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。
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