9月入学は「世界標準」の大ウソ。独も豪も「9月以外」の現実

 

ま、この「9月入学」には賛否両論あると思いますし、細かいことを言えば「9月入学には賛成だが、新型コロナ禍の今、無理に進めて準備不足になると現場が大混乱する。新型コロナが収束してから、じっくりと議論すべきだ」という意見もあります。改憲派の憲法学者の97%が「改憲には賛成だが現在の安倍政権下での改憲には断固反対」と言っているのと同じことです。先日の「黒川法案」のように、安倍政権は国民の批判が大きい法案を何かのドサクサに紛れて強行採決するのがお家芸ですが、「9月入学」にしろ「憲法改正」にしろ、とても大きな問題なので、十分に時間を掛けてじっくりと議論すべきだと言う意見が大半なのです。

そのため、今回はあたしの私見は書きませんが、ひとつ気になった点があるので、その点に触れたいと思います。それは、吉村洋文氏しかり、小池百合子氏しかり、その他の賛成派の国会議員や有識者しかり、みんな口をそろえて「今や9月入学がグローバルスタンダードだ」と繰り返したことです。そもそも、これって本当なのでしょうか?だって、あたしの韓国の友人は「韓国では3月から新学期」と言ってましたし、オーストラリアの友人は「入学は1月から2月」と言っていたからです。そこであたしは、各国の小中高校の入学式が何月なのか調べてみました。

1月 シンガポール、マレーシア、フィジー
2月 オーストラリア、ニュージーランド、ブラジル
3月 韓国、アルゼンチン、ペルー、チリ
4月 日本、インド、パキスタン、パナマ
5月 タイ
6月 フィリピン、ミャンマー
7月 インドネシア
8月 ドイツ、スイス、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、台湾
9月 アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、ロシア、カナダ、中国、ベトナム
10月 エジプト、ナイジェリア、セネガル、カンボジア

皆さん、これを見て「9月入学がグローバルスタンダード」だと思いますか?世界の国々は北半球と南半球とで季節が逆になりますし、日本のように四季のある国もあれば、雨季と乾季しかない国もあります。また、毎年同じ時期に宗教的な大きなイベントがある国もあります。あたしはこの一覧を見て、世界の国々は「他の国々の多くが●月だから我が国も●月にしよう」という理由で決めているのではなく、それぞれの国がそれぞれの国の季節や事情に合わせて入学時期を決めているように感じました。

それから、もうひとつ、あたしが気になったのは、吉村洋文氏や小池百合子氏や他の賛成派の国会議員たちが、まるで水戸黄門の印籠のように連呼していた「グローバルスタンダード」という言葉です。他にも教育の専門家のような人が「ワールドスタンダード」と言っていました。たぶん「国際標準」とか「世界標準」とかの意味で使っているのだと思いますが、どちらも日本人が勝手に作った「和製英語」です。

「国際標準」や「世界標準」の意味であれば、英語では「international standard (インターナショナルスタンダード)」と言います。しかし、これは主に技術分野における国際工業規格や国際会計基準を意味する言葉なので、ISO(国際標準化機構)規格と同じような意味になります。そこで日本人は、約20年ほど前に「世界標準」という感覚をビジネスや金融の分野にも広げるために「グローバルスタンダード」という和製英語を作り、多用するようになりました。

でも、昔から「アメリカがくしゃみをすると日本が風邪をひく」と言われているように、これまでの日本の政権は、軍事だけでなく経済でもアメリカの属国ですから、日本人が口にするビジネスや金融の分野での「グローバルスタンダード」は、所詮は「世界標準」ではなく「米国標準」だったのです。日本の政治家たちは、アメリカのやり方に足並みをそろえる時に、この「グローバルスタンダード」という和製英語を連発し、あたかも世界中の国々がそうしているかのように日本国民を騙して来たのです。

アメリカ人たちは「自分たちこそが世界標準」と思ってますから、あえて「スタンダード」という表現は使いません。でも、アメリカ従属の日本人が「グローバルスタンダード」という和製英語を作り、アメリカにシッポを振り続ける日本の政治家やビジネスマンたちがアメリカを標準として「グローバルスタンダード」という言葉を使い始めたため、アメリカもこれに倣うようになったのです。

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