「20億中抜き」の電通隠れ蓑法人を経産省が自作したという証拠

 

まず問題になるのは、この事業の入札だ。野党議員が入手した「入札調書」によって、デロイト・トーマツ・ファイナンシャルアドバイザリー合同会社とサービスデザイン推進協議会が応札したことがわかる。ところが、デロイト・トーマツの入札額は黒塗りにされているのである。

デロイト・トーマツといえば世界的な会計事務所のグループで、入札調書にも等級を「A」とし、最上ランクに格付けている。にもかかわらず、等級「C」のサービスデザイン推進協議会を選んだ理由は何なのか。

デロイト・トーマツの入札金額が、推進協議会より高いのなら納得がいく。黒塗りをせずに公表すれば、はっきりするだろう。なのに、6月3日の衆議院経済産業委員会で梶山弘志経産相が「価格公表を控えてほしいとデロイト・トーマツが言っているので」と、“安倍政権定番”の逃げを打ったため、何もわからないまま疑念だけを深める結果となった。

その行き着くところは、経産省との関係だ。最初から、サービスデザイン推進協議会に決めていたのではないか、と怪しむ気分がムクムクと湧き上がってくる。

サービスデザイン推進協議会は、電通、パソナ、そしてIT関連のトランス・コスモスがつくったことになっているが、実際は経産省が絵を描いたと、筆者は思う。

電通もパソナも、政官との癒着で巨利をむさぼっている。あらゆる分野の企業ネットワークにもつながっている。官僚たちは、こうした大企業に仕事をまわすことによって、将来の天下りにそなえる。たとえ取引額は相場より高くついても、自分たちの腹は痛まない。

そもそも官僚たちは業界団体や有識者団体をつくり、省益や、天下りに利用する術に長けている。自分たちの仕掛けた民間団体の、あたかも事務局のように立ち回ることすらある。

それで思い出すのは2013年、元東大総長、有馬朗人氏を会長とする民間団体「エネルギー・原子力政策懇談会」が、原発再稼働を求める「提言書」を安倍首相に手渡したときのことだ。

その文書を作成したのが経産省官僚であることがわかり、メディアに報じられた。もちろんこれは原発推進をはかるための仕掛けだ。

今回の持続化給付金については「なによりスピード」と政府は強調し、サービスデザイン推進協議会を選んだ理由の一つにしているが、たとえそうだとしても、不透明なやり方では、税金を無駄に使っているように見えてしまう。

なにしろ、サービスデザイン推進協議会に委託し、それを協議会が電通に丸投げ、電通はさらに下請けに出すというかたちで、取引が連なるごとにマージンが発生しているのだ。

電通にそっくり“再委託”した協議会には20億円、電通ライブなどの関連会社に“再々委託”した電通には104億円、パソナ、トランス・コスモスなどいくつもの企業に外注した電通ライブには8,000万円が残るしくみだ。

これでは費用がかさむはずであろう。なぜ電通なら電通、デロイトならデロイトと、ふつうに発注しないのかという疑問が生じてあたりまえである。

サービスデザイン推進協議会の入居するビルのテナント名を見れば、そのワケが、うすうすわかる。

サービスデザイン推進協議会の事務所があるビルの2階フロアーには「商店街まちづくり事務局」「中心市街地活性化事業事務局」があり、3階にも「中心市街地再生事業事務局」など4か所、いずれも電通が落札した経産省、国交省関連事業のオフィスが並んでいる。

6月3日の衆院経済産業委員会で、斉木武志議員(国民)は「コスト圧縮を考えると、全部、電通本社の公共政策部でやればいいではないか」と指摘した後、この問題の本質にかかわる事実を突きつけた。

「サービスデザイン推進協議会の設立そのものを経産省が行ったのではないか。あの団体の定款の作成者がなぜか経産省情報システム厚生課の名前になっている」

この質問には補足が必要だ。同協議会の定款が掲載されたページのURLをもとに、2016年5月に作成された初期定款のプロパティ欄にたどりついたブロガーがいて、斉木議員はその情報をもとに質問したと思われる。

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