例えば「臭い」と「匂い」など、同じ読み方をする故にどちらを使えばいいのか迷ってしまう漢字、ありますよね。今回の無料メルマガ『仕事のメール心得帖(無料版)』では著者の神垣あゆみさんが、そんな紛らわしい漢字の書き分けについて、例文を挙げながら分かりやすくレクチャーしてくださっています。
「くさい」「におい」の書き分け
くさいにおい
これを漢字で書くと
臭い臭い
と書くことができ、これだと「くさいくさい」とも読めてしまいます。
新聞の統一表記では、実際に不快なにおいがする場合は「臭い」と漢字で表記し、疑わしいとか、怪しい様子を比喩的に表現する場合は「くさい」と平仮名表記にして区別しています。
例)「臭い」 : 汗臭い、酒臭い、臭い物にふた
「くさい」: うさんくさい、素人くさい、面倒くさい
「におい」の漢字表記には、上記の「臭い」のほかに「匂い」もあります。どのように使い分けるのでしょう。
新聞の統一表記では、鼻で感じる刺激のうち心地よいにおいを「匂い」と表記し、不快なにおいを「臭い」と表記して区別しています。
例)「匂い」:バラの匂い、匂い袋
「臭い」:嫌な臭い、生ごみが臭う
しかし、冒頭に挙げた「臭い臭い」のようにどちらも同じ漢字表記になる場合は紛らわしいので、「臭いにおい」と「臭い」は漢字表記で、「におい」は平仮名表記とします。もっとも「臭いにおい」の代わりに「悪臭がする」と書けば、区別はできるのですが……。
においは感覚的なものなので、柔軟剤や香水のにおいを心地よいと感じる人もいれば、不快と感じる人もいます。このように良い香りか不快な臭いか判別できない場合も「臭い」ではなく、平仮名の「におい」を用います。
「とめる」「やめる」の書き分け
その計画はすぐに止めるべきです。
という一文に使われている「止める」。「とめる」とも「やめる」とも読むことができ、どちらの読みでも意味は通ります。
自分では「とめる」のつもりで入力しても「止める」と漢字変換されると読む側は「やめる」と読んでしまうということが起こります。
新聞の統一表記では「とまる・とめる」の場合は「停止」の「止」を用いた漢字表記とし、「やめる」の場合は平仮名表記と区別し、統一しています。
したがって上記の文例は
継続している計画を停止する(とめる)場合は
その計画はすぐに止めるべきです。
計画自体を終わりにする場合は
その計画はすぐにやめるべきです。
と書き分けます。
「止める・止まる」と表記するのはほかにも
- 交通が止まる、通行止め
- 差し止める、流れを止める
などがあり、「やめる」と表記するのは
- 会議を取りやめる、作業をやめる
のように使います。
細かいことのようですが、使い分けの基準を持っておくと、入力時
「からい」「つらい」の書き分け
とても辛いです。
この一文に使われている「辛い」も「からい」と「つらい」と二通りの読みがあります。
「とても辛いカレーでした」という文であれば「からい」、「とても辛い経験でした」という文であれば「つらい」と文意から区別して読むことができますが、冒頭のような文例だと、判断がつきません。
新聞の統一表記では「からい」は「辛い」と漢字で表記し、「つらい」は平仮名表記で統一しています。パソコンでは「からい」と入力しても「つらい」と入力しても「辛い」が変換候補に出てきます。
自分は「つらい」と訴えたいのに相手は「からい」と読んでいたというのでは、少々つらいので、「辛い」と「つらい」の書き分けをお勧めします。
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