電通と国との癒着が表沙汰になった、持続化給付金をめぐる一連の騒動も収束を見せていますが、このような政府と特定の企業との癒着は「氷山の一角」のようです。メルマガ『週刊 Life is beautiful』の著者で世界的エンジニアの中島聡さんは、自身のメルマガの「私の目に止まった記事」というコーナーで、大手広告代理店出身の作家による記事を紹介しながら、日本経済と政府の歪んだ一面について疑問を投げかけています。
プロフィール:中島聡(なかじま・さとし)
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。
私の目に止まった記事
● 電通と政府・官僚が癒着した理由とは? 博報堂出身の作家が解説
国の持続化給付金支援事業を引き受けた社団法人「サービスデザイン推進協議会」が実はペーパーカンパニーで、全ては電通に丸投げされ、さらに電通はそこから子会社や関係会社に丸投げするだけで莫大な手数料を取っていた件が明らかになり、マスコミや野党が大騒ぎをしましたが、上記の記事によると、この件は氷山の一角でしかなく、数多くの政府の事業を電通が仕切っているそうです。
そのために、
- 「サービスデザイン推進協議会」のようなトンネル団体を数多く作る
- 常日頃から官僚を接待して気脈を通じておく
- 財務省、総務省、経産省、国土交通省、警察庁などから幅広く天下りを受け入れる
などのことを行なっているとのことです。
トンネル会社こそ作っていませんが、NECや富士通などのいわゆる「ITゼネコン」も、全く同じようなことをして収益を上げている会社であることは、このメルマガでも何度も指摘しています。
そして、当然ですが「ゼネコン」という言葉のルーツでもある大手の土木建設業も、高速道路、トンネル、橋、空港、原発、ダムなどの公共事業を受注し、それを下請け、孫請けに流すことにより莫大な売り上げをあげています。
そう考えると、日本経済のかなり大きな部分は、政府もしくは政府に近い公共性の高い法人(NHK、JR、NTT、ドコモ、電力会社、銀行、道路公団、農協など)から、様々な事業を各種ゼネコン(広告代理店、ITゼネコン、土木建設業者)が受けることにより、成り立っているのが日本だとつくづく感じます。
これこそがまさに、「日本的社会主義経済」の実態ですが、必ずしも政府の予算が直接使われるわけでなく、旧民主党の石井紘基氏が暴こうとして命を奪われた「特別予算」が使われたり(詳しくは石井紘基刺殺事件参照)、電気ガス水道・受信料・電話料金・通信料金なども流れるため、全体を把握するのはとても困難です。
ですから、実際に日本のGDPのどのくらいがこの「特殊経済圏」に絡んでいるのかは、概算を見積もることすら難しいのですが、日本の国際競争力が落ちている一方で、政府の支出は増え続けているので、すでに30%は越えているのではないかと私は見ています。
ちなみに、この件に関しては、現代ビジネスに「安倍政権下でなぜ日本は『縁故資本主義』になったのか、その本質的理由」という素晴らしい記事が書かれているので、こちらも是非とも読んでいただきたいと思います。
この著者はこれを「縁故資本主義」と呼び、「当局者の事後的な裁量判断」が蔓延する結果、「自らリスクを負ってものごとの決定をした人が経済的に報われる」という自由主義経済の本来あるべき姿から、「官僚や政治家が裁量でものごとを決め、リスクは全て国民が負う」形に変わってしまったと厳しく批判しています。
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