同志が語る李登輝氏の素顔と日本愛。私たちは反日勢力と中国にどう対峙すべきか?

 

李登輝元総統未完の教育改革

蔡英文総統はじめ、民進党現政府の方々は、李登輝元総統の歴史評価について「民主化」のみを強調していますが、私はそれだけでは不足だと思っています。というのは、「近現代」の原点としては、政治の民主化、経済の産業化以外に、社会文化などの自由化、多様化が欠かせません。

李登輝時代になされた大事業は、「台湾民主化」「憲法改正」など様々ありますが、「教育改革」もそのひとつでした。私が知っている限り、当時の台湾には、戦後日本の教科書問題以上の歴史教育の偏向がありました。

彼は、台湾の中学二年生の「社会科」改定版教科書では、中国人による台湾統治の正当性を強調する反面、日本による統治は「植民」を強調するような改正を行いました。90年代の台湾では、国民党員でなければ校長先生に就任することができないという教育の支配構造がありました。

そのため、たとえ教科書を改訂しても、校長が採用しなければ意味がありません。李登輝の改革は、じっくりと時間をかけて慎重に、かつ確実に行われました。教科書問題は、一朝一夕に解決するものではありませんが、改革の気運はあるし、悪い方向へは向かっていないように思います。

近年、台湾では民進党が選挙で勝利して政権を取っているものの、国防や外交は中国人が牛耳っています。外務大臣に、「外務省の人事課がすべて外省人ではよくない。少なくとも台湾人を一人くらいは入れるべきだ」とアドバイスする人物がいても、外務大臣は盗聴を恐れてその場で返事さえできない状況です。

台湾を変えた李登輝元総統が去った後は、現政権独自の民主化路線を歩む時代がやってきます。教育、マスメディア、司法、軍事、外交など様々な課題は残っています。教育においては、戦後の中国による独占が70年間以上も行われてきました。中華風の教育は、奴隷と愚民を育てるための「奴化教育」です。

李登輝の教育改革が頓挫した理由は、主に中華の伝統にあったと私は考えています。中華の伝統は、全人類の歩むべき道と逆行しています。まずは「公」の価値が優先すべきなのです。しかし、中華の文化風土には「私」しかありません。梁啓超も、はっきりと「中国には社会道徳なし」と公言していました。

台湾は、戦後70年間以上も中華式の「教育」を受けていたので、自己中心と自大の人間しか育てられなかったと私は思っています。台湾最大の教育問題は、知識と記憶のみに偏向しており、知恵や分析などを軽視している点です。「奴化教育」において優秀とされる人材は、若い時から諜報機関に青田買いされ、残りの人材は医者か弁護士の道を進み、さらに残りの人材は社会か人文の分野へと進みます。このままでは、「愚民」ではない人材をつくることのできない社会のままです。

現在、ネット社会になったことなどの影響で台湾社会には様々な価値観が同居しているために、若者たちの価値観も多様になってきました。しかし、教育の現場で「公」の価値を優先させるにはまだまだ課題が山積しています。現政権だけでは終わらない課題も多くあるでしょう。

特に、李登輝時代からスタートした教育改革については、国策として推進していくべきです。バイリンガル国家として英語教育を強化するのも賛成ですが、平行して李登輝が目指した教育改革も深く追求して頂きたいと思っています。

李登輝元総統亡きあと、台湾が受け継いだ課題は、時間をかけても余すことなく後任者が責任をもって解決する。それこそが李登輝元総統に対する恩返しであり、台湾に明るい未来をもたらすための有益な方法だと思っています。


 

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※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2020年8月5日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。

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