同志が語る李登輝氏の素顔と日本愛。私たちは反日勢力と中国にどう対峙すべきか?

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「台湾民主化の父」と言われ親日家として日本でも広く知られていた、台湾初の民選総統である李登輝元総統が7月30日に97歳で逝去されました。日本でもテレビやネットで速報が流され、ニュース番組でも大きく取り上げられましたが、その偉大なる功績が充分に伝えられていないのも事実です。李登輝氏と縁の深い台湾出身の評論家・黄文雄さんはメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』の中で、李登輝氏とともに台湾の民主化を勝ち取るために戦った日々を回想しながら、黄文雄さんしか知り得ない李登輝氏の本当の素顔と信念について綴っています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2020年8月5日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄こう・ぶんゆう
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

誰よりも台湾を知る論客が語る、李登輝元総統の素顔と日本への愛

李登輝のおかげで台湾に帰れた

李登輝元総統は、2020年7月30日夜にご逝去されました。97歳でした。日本でも新聞やテレビなどで速報されました。

しかし、実際にご逝去される前から、ネットでは様々な憶測やフェイクニュースが出回っていたので、正式な報道が出た後も私はしばらく信じられませんでした。そこで、「李登輝友の会」事務局に確認したところ、「友の会」も台湾側に確認したとのことでした。蔡英文総統は、7月31日、正式に以下のような追悼のコメントを発表しました。

『私達が心から敬愛する李登輝元総統がご逝去されました。李元総統は台湾の人々とともに歴史的挑戦を幾度も乗り越えてきました。台湾に民主自由を残し、今後も私達を勇気づけてくれることでしょう。李元総統の遺志を継ぎ「台湾に生まれた幸福」を追求し続けます。』

(出典:台湾・蔡英文総統「李元総統の遺志を継ぎ『台湾に生まれた幸福』を追求し続けます」

「李登輝友の会」は、李登輝元総統の精神を受け継ぎ日台共栄を目指して2002年に設立されました。毎年行われている定例会は、今年はコロナの影響で中止になりましたが、理事会は行われていました。その中で、李登輝元総統に万が一のことがあった場合の会の存続についても事前に議論しました。

はっきりとした結論はまだ出ていませんが、私は「李登輝精神記念会」として存続することを望んでいます。私も数十年来、台湾事情について深く関わってきた一人です。今回のメルマガでは、万感の思いで追悼の意を込めて、李登輝元総統との思い出をつらつらと書きたいと思います。

私は、「何かの縁」で一人の言論人として、半世紀以上も筆を執ってきました。しかし、そこに至るまでは大変な道のりでした。日本に渡ってきてからは、反政府分子のブラックリストに載せられ台湾に帰ることも許されず、アルバイトでその日暮らしの日々を長年送っていたのです。アルバイトはいろいろやりました。

1964年、早大在学中の私が最初にしたアルバイトは、産経新聞の書庫での仕事でした。ちょうど東京オリンピックの年でもありました。アルバイトで徳間書店の『週刊アサヒ芸能』へのお使いもあったので、それが縁でこの雑誌は80年代まで愛読していました。

1992年、李登輝氏が台湾の総統になって以後、ブラックリストが解除されました。台湾独立運動を支持し、日本で言論活動をしていた私は、李登輝元総統のおかげで、29年ぶりに台湾へ帰ることができたのです。

李登輝元総統の桃園にあるご自宅に初めてお伺いした時は、今は亡き杏林大学の教授であった伊藤潔氏も一緒でした。それ以後、私はしばしば李登輝元総統の台北にある別荘を訪れたものでした。

私の友人「伊藤潔」は、帰化した後の日本名で、台湾名は劉明修といいました。彼と私は、共に日本で台湾独立運動を支持していた同志です。『李登輝伝』(文芸春秋)という著書もあります。伊藤氏について詳しくは以下のページをご覧ください。この文章を書いたのは、同じく日本で台湾独立運動を支持していた宗像隆幸氏であり、彼も故人となってしまいました。

● 【何たる悲劇!】劉明修(伊藤潔)博士病死、続いて次男交通事故死

李登輝元総統はたびたび来日していました。奥の細道への旅もしました。私は、氏の日本での活動を通じて、反日日本人の勢力がいかに大きいかを知りました。中国の意向を忖度し、中国の顔色を窺っているのは、外務省のチャイナスクールや媚中派の政治家など政治の中枢にいる人々とマスコミだけかと思ったら、大学内や企業内などどこにでもいるのです。

その草の根ネットワークの広さに驚いたものでした。かつて私は、自民党の有力幹部に、李登輝氏の訪日は可能かどうか聞いたことがありました。彼は、「それは否定できない」と答えました。つまり、彼は少なくとも媚中派ではなかったということです。

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