コロナ禍で瀕死の事業者を救う最も簡単な「税控除」の施策とは?

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コロナ禍で瀕死の状況となっている業種業態に向けた支援策として、政府が打ち出す「Go To 〇〇」の各キャンペーン。さまざまな制約や面倒な事務作業があり、本当の救いになっているのでしょうか?疑問を呈しつつ“目からウロコ!”の救済策を提示するのは、メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さんです。そのアイデアとは、生活に余裕がある人の消費を促し、かつ事業者にはほとんど負担のない「税控除」の仕組みを利用するものでした。

救うこと

コロナ禍において最も打撃を受けたのは所謂「客商売」であろう。その主なものには観光業、飲食業そして娯楽業などがあり、政府の振興策もそれにきれいに対応するように「Go To トラベル」「Go To イート」「Go To イベント」と企画されていた。最も弱ったところから助けるというアイデア自体は極めて真っ当なものと言えたのだが、如何せんやり方がまずかった。ニュースなどでも「Go To トラベル」というフレーズはとんと聞かなくなった。そんな始末である。どんなに優れた企画もスムーズに運営(あるいは運用)できなければ何の意味もないどころか、却って迷惑なのである。

そういった事情もあり、個人的には最も効果的な経済振興策は給付金だと考えるに至っている。その根拠は、そもそも一度実施しているためにオペレーションが簡単になっている筈である。コロナのあるなしに関係なく生活に余裕のない人たちは旅行にも外食にも観劇にも行かない。そういう人たちにとって給付金はまさに自分たちの生活をつなぐものとなる。

逆にもともと旅行好き、外食好き、観劇好きの人は給付金をその原資にできる。当面、給付金が必要のない人には「今現在、生活に困っている訳ではないので今回は辞退する」といったチェックボックスを用意することで意思を確認すればいい。さらに政府など信用できないという人たちのために「寄付先一覧」といった書類を同封しておけば個人の判断でその使途を選ぶこともできる。などである。

問題は個人レベルの給付金をどうやって観光や飲食や娯楽へとつなげるかである。ここで下手を打つと先の「Go To トラベル」の時のように、本来助ける筈の観光業従事者が一番面倒な(というより出鱈目な)事務的作業を強いられるという結果になりかねない。

一番手間が掛からないのは何と言っても税控除である。これなら観光事業者は新たに何もしなくてもいい。領収書を発行すればいいだけのことである。納税者は申告の際にその領収書を添付すれば年金や生命保険などと同様に税控除が受けられるというやり方である。つまり旅行が税金対策になるという訳である。生活に十分余裕がある人は豪華旅行をすればいいし、少しばかりの余裕がある人はいつもよりワンランク上の旅行をすればいい。そんなに余裕がない人でも「どうせ税金に払うくらいなら」と思えば小旅行くらいはする気になるかもしれない。もちろん控除は受けないという選択もできる。

このアイデアは「Go To イート」や「Go To イベント」にも使える。むろん五、六百円ほどの少額の食事までという訳にはいかないから対象金額に下限は必要であろうが、たとえば一人一万円以上の食事とかなら大体無理のないところなのではないだろうか。さらにこの下限制度はイベント等の興業においてもプラスとなる。興行主がチケットの代金を高めに設定し易くなるからだ。

このようにしてでもコロナ禍により生じた巨額の損失をいくらかでも補填することができれば観光業や飲食業、エンタメ産業にとってはかなりの延命となる筈である。生きてさえいれば明るい未来を頼むこともできよう。多くを救いたいという気持ちは分かる。だが手当たり次第の出鱈目はダメだ。
「隗より始めよ」
この故事より成った語を、今改めて肝に銘じておきたいものである。

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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