菅政権“デジタル化”の笑止。モリカケ桜の解明なくして日本は効率化できぬ

 

もちろん、日本政府だってこの20年、デジタル化への意欲だけは示してきた。

2001年に、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)を設置し「5年以内に世界最先端のIT国家になる」とぶち上げた。その結果、ブロードバンドインフラについては高い水準に達した。

しかし、そのインフラを生かし、行政と国民生活の隅々まで行き渡るデジタル国家には至らない。各省がバラバラにIT投資、施策を進めたためである。その背景には、省庁や族議員とつながっている経済界の既得権益がある。

戦後日本の経済を牽引してきた鉄鋼、電気、自動車など、垂直統合型の大組織や経営思想が、その確固たる成功体験ゆえに、デジタル化への発想転換を阻んできたのだ。

業界横並びやリスク回避指向の強い大企業が、政府の過保護に頼って生きのびてきた結果、必要な淘汰や世代交代が進まなかったこともあげられるだろう。いまだに合併して企業規模を大きくすることしか思いつかず、日本のように垂直統合型の巨大製造業がなかった中国などにデジタル分野では大きく水をあけられてしまった。

再び、エストニアに目を向けてみよう。そこでは、どんなデジタル社会が出現しているのであろうか。

たとえば、会社設立。日本では多くの書類が必要で、登記申請が面倒だが、エストニアではインターネットで30分もあればこと足りる。司法書士の手を借りる必要はなさそうだ。

もちろん、eIDカード(マイナンバーカード)のたまもので、役所で住所変更をしたり病院で処方箋を発行してもらうのもスマホやPCがあればOK。健康保険、処方箋、カルテがオンラインで結ばれているため、転院しても、新たな検査の必要がほとんどない。投票はインターネットででき、もちろん税金の申告も。

つまりほとんどすべての行政サービスがオンライン化されているといっていい。例外は結婚、離婚、不動産売買くらいのものだという。このように便利なデジタル社会で肝心なのは、先述したようにマイナンバーカードへの信頼性だ。

国が国民を監視したり管理したりするのに使われないか、なりすましや、個人情報の漏洩はないのか、などの恐れがわれわれ日本人には根強くある。

では、エストニアのeIDカードへの信頼性はどこで担保されているのかを見てみよう。

電子政府の本質をなすのが「X-Road」というシステムだ。これを金融機関など民間が利用し、社会全体のセキュリティを形成している。

情報はセキュリティ・サーバ間でやりとりされ、暗号化されてインターネット上に送信される。すべてのメッセージには署名がされ、署名鍵は認証局である第三者機関(X-ROADセンター)に登録される。セキュリティサーバーにより、誰がいつ利用し、どのような意思決定が行われたかなどを復元できる。

カードを紛失したらすぐに再発行し、パスワードも変えられる。よほどのことがない限り、なりすましの被害にあうことはないというのが、エストニアの人々の認識だ。

国のシステムを信用し、国民の監視などに悪用されることはないと確信しているからこそ、エストニアでは電子化がしっかりと根付いているといえよう。

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