ジョブスもエジソンも発達障害だった。親はASD児をどう育てるべきか?

 

世界トップクラスの研究者には発達障害の傾向がある

特に自閉症者は、普通の人とは世界の認識の仕方が異なっているようです。

定型発達(健常者)が対人関係の中で自分の価値を追求する傾向があるのに対し、自閉症者は人間を取り巻く社会や物理的な環境に注目する傾向があるように感じます。

それはたとえばオタクであり、突き詰めれば「学者」や「研究者」と言い換えることもできます。

実際、同じテーマの研究を何十年間も継続するのは、オタク的気質がなければできないでしょう。

私の妻は音楽家でもありますが、彼女によると、ピアノや歌など音楽の世界でもトップクラスは奇人変人が多いらしく、行動を聞くとおそらく発達障害だろうなあと推察します。

最近でも、児童発達支援施設の先生が、将棋の世界で有名な藤井聡太氏を指して「あの人はたぶんADHD」と言っていました。視線の向きが独特でインタビューのときにも目を合わせないのはADHDによく見られる傾向だそうです。

だからこそなのか、彼は10代でありながら先輩プロ棋士を次々に撃破し、様々なタイトルで最年少記録を塗り替えるなど、傑出した才能を発揮しています。

ニューロ・ダイバーシティという考え方

過去にもモーツァルトやアインシュタイン、トーマス・エジソンやレオナルド・ダ・ヴィンチなどの偉人たちはみな、現代であれば発達障害と診断されていただろうと言われています。

もし彼らがはみ出し者として社会から除外されていたなら、その才能は開花せず、世界を変えた大発明すら起こらなかったかもしれません。

あるいはアップルの故・スティーブ・ジョブズ氏、ヴァージングループのリチャード・ブランソン氏、テスラやスペースXのイーロン・マスク氏なども発達障害と言われていますが、ゆえに突き抜けた存在になることも珍しくありません。

さらにアメリカの調査ではADHDの人が経営者になる確率は平均より6倍も高いそうです。

確かに、人の気持ちを考えたり空気を読んだりする人が、無茶な夢に向かって突っ走るようなことはできないでしょう。他人の気持ちがわからないから、人の目を気にせず周囲からの批判にも屈せず組織を引っ張れるというのもわかるような気がします。

そんなふうに対人関係などで問題があっても、特定の分野で突出した才能を持つことがある発達障害者ですが、近年は彼らを活用するニューロ・ダイバーシティという考え方が浸透し始めています。

実際、シリコンバレーなどでは、自閉症やADHDなど発達障害の傾向がある人材を「ニューロ・ダイバース人材」として積極的に採用・活用している企業が少なくありません。

たとえば、エンジニアやプログラマなど、細かい部分への注意力が求められる仕事では、高い集中力を持ったニューロ・ダイバース人材のほうが健常者より生産性が3割アップしたというニュースもありました。

それら企業では、「忘れっぽい」「複数のタスクの同時並行ができない」「チームプレーが苦手」といった発達障害者の特質を周囲が理解し適切にサポートしているそうです。そうやって発達障害者が持つ能力を発揮できる環境を整備することで、並外れたパフォーマンスを上げているわけです。

こうしたニューロダイバーシティ、ニューロダイバース人材の活用は、今後も広がる期待があります。ということは将来、発達障害がむしろ武器になる可能性を秘めているわけです。

 
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