「GoToで感染拡大」の論文を軽視、学問に敬意を払わぬ政治家たち

 

では、話を戻しましょう。

件の調査は、インターネットサイトに登録している人を、年齢や居住地などが偏らないように無作為に抽出し、15-79歳およそ2万8,000人を対象に、2020年8月末~9月末に実施しました。

質問項目には、GoToトラベルの利用経験(過去1-2ヶ月以内の利用の有無)と、過去1ヶ月以内に新型コロナを示唆する5つの症状(発熱、喉の痛み、咳、頭痛、嗅覚・味覚異常)の経験を訊ね、関連を調べました。

分析は、性別・年齢・社会経済状態・健康状態、居住地などの基本属性の影響を統計的に取り除いた上で行われています。

その結果(GoTo利用者 vs 非利用者)

  • 発熱:4.8% vs 3.7%
  • 喉の痛み:20.0% vs 11.3%
  • 咳:19.2% vs 11.2%
  • 頭痛:29.4% vs 25.5%
  • 嗅覚・味覚異常:2.6% vs 1.7%

で、すべての症状においてGoTo利用者の有症率が統計学上高く、およそ2倍前後にのぼることが確認されました。

また、年齢別に分析を行ったところ、GoToトラベルの利用経験による有症率の違いは、65歳以上の高齢者よりも、65歳未満の非高齢者で顕著でした。基礎疾患の有無による違いは認められませんでした。

以上の結果から、「GoToトラベルの利用者は、新型コロナ感染を示す症状の発生率が高かった」ことがわかります。しかし、ここで注意しなくてはいけないのは「Association between」とタイトルが示すとおり、AとBの関連、すなわちGoTo利用者とコロナ感染症状の関連を分析した結果で、A→Bという因果関係を分析したものではないという点です。

一方、発熱、喉の痛み、咳、頭痛、嗅覚・味覚異常などの各症状は、コロナに感染していなくても経験しますが、いずれもコロナ感染で認められている症状であり、5症状のすべてで有意に利用者の有症率が高かったことは、「コロナ感染のリスク大」と解釈できます。

その上で研究グループは、

  • GoToトラベル利用によって新型コロナ感染のリスクが増加した可能性
  • もともと活動的で、新型コロナの感染リスクの高い行動をとりがちな人の方が、より積極的にGoToトラベルを利用している可能性

を示唆しています。

つまり、5つの症状が「GoToトラベル」ではなく、「日常の活動」によって誘発された可能性も否定できないからです。

さて、いかがでしょうか?わかっていただけましたでしょうか?

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