「GoToで感染拡大」の論文を軽視、学問に敬意を払わぬ政治家たち

 

こうやって読み解いていくと、いかにこの調査研究が有益かがわかるはずです。前述したとおり、研究者の思いは「コロナ感染拡大をおさつつ、最大限経済を活性化することの示唆」にあります。

人が移動すれば接触する人も増えるし、旅行にいけばおしゃべりしながらご飯を食べたり、仲のいい人たちと長時間をお酒を飲んで盛り上がるなど、感染するリスクは高まることは容易に想像できます。

その「想像」は本当なのか?実際にはどうなのか?という疑問を科学的に捉えるために、件の調査研究は行われたのです。

繰り返しますが、あくまでも関連でしかないことは事実です。でも、その「関連がある」という科学的な根拠から、GoToのあり方、実施時期、停止する時期などを考えることが大切なんじゃないでしょうか。

GoToトラベルは「Government Subsidy Program」、私たちの税金です。

誰か大金持ちが大枚叩いて、「経済活性化させるぞ!」とやっているわけじゃないのです。であるなら、少なくとも「GoTo取りやめは一切考えてない」「いつの間にかGoToが悪者にされている」という発言は出なかったし、GoTo対策がここまで後手後手になることもなかった。

以前も書きましたが(Vol.196 「学術会議問題で判った日本の学問軽視、識者の声を黙殺してきた前科」)、悲しいかなこの国は「学問」に敬意を払いません。EBPM(証拠に基づく政策立案)が行なわれず、“霞が関”を中核にしたいわゆる「御用学者」が重宝されがちです。

長くなってしまいましたが、最後にもうひとつ。今回の論文が「査読中」ということで、あたかも「質が低い論文」のごとくコメントするMCやコメンテーターがいましたが、査読中なのは単に「査読に時間がかかる」からです。質とは関係ありません。

私は自分の論文が査読を通るのに1年近くかかるのは当たり前でした。今はもう少し短時間で行われているようですが…。

みなさんのご意見もお聞かせください。

image by: 首相官邸

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