1500人もの社員を「適法」でクビにした日本IBM「退職勧奨」の実態

 

問題社員に対する退職勧奨の成功事例

1.住宅メーカーS社のケース

住宅メーカー社員Aは同社で長年勤続し、営業係長の地位にあったが、長期間にわたってまったく業績を挙げられていない状態であった。会社からAに対しては、成績向上を求めて複数回の面談がおこなわれたが、結果的に成績が向上することはなく、面談は最終的に退職勧奨に至り、Aは退職届を提出して退職した。

後日、Aは「会社から『退職に応じなければ懲戒免職にする、その場合には退職金も支給されない』と言われて無理矢理退職を強要された。退職は真意ではない」として会社を提訴した。しかし裁判では「会社の就業規則に『成績不良を理由に解雇することがあり、その場合に退職手当は支給されない』との規定がある」こと、「長期間全く業績なしであれば解雇事由に該当する可能性は極めて高く、懲戒免職を持ち出す必要はない」ことから、「営業成績からして、面談等を重ねたことや、その結果最終的には退職勧奨にまで至ったことは、企業としてはやむを得ない措置」であり、「Aが退職勧奨の趣旨と内容を理解したうえで退職届を提出したことは明らか」との判断が下り、企業側が勝訴、退職勧奨は有効とされた。

2.人材サービス企業W社のケース

人材紹介業と求人広告代理店業を営むW社に勤務していたBは、業績は良好であったものの、顧客との関係性に影響を及ぼす重大なミスを複数回繰り返し、指導しても改まらなかった。そのため会社はBに対して退職勧奨を行い、Bはこれに応じて退職した。

しかし後日、Bは「退職を強要された」と主張し、6ヵ月分の給与相当額の金銭補償を求めて労働審判を提起。審判では退職が合意か強要かが争点となったが、会社側はミスの度に指導文書を発行したうえで、誰がどのような指導をおこなったか記録を残していた。また退職勧奨の場においても、誰がその場に立ち会い、具体的にどのような話し合いがなされたのかについても記録を残していた。結果的にその記録から、退職勧奨に立ち会った責任者はBと同期入社で友人関係にあり、不当な力関係は存在しなかったこと、そして退職勧奨後にBから「新たな職場で前向きに頑張っていく」という趣旨のメールが送られていた事実も明らかとなったため、労働審判において「退職は合意によるもの」と認められることとなった。

これらの事例のように、退職勧奨を経た合意による退職であっても、退職後に「実は本心では合意していなかった!」などとして従業員側が訴えてくるケースは存在する。しかし、ここまで説明してきたように、就業規則を整備し、ある程度の時間をかけて面談や指導を繰り返し、都度文書などで記録を残しておくこと、そして退職時には退職届を提出させることによって、退職に至る経緯を詳しく説明することができる確固たる証拠となる。丁寧な準備こそ、最強の防御となるのである。

では実際、問題社員を前にどのような形で退職勧奨をおこなえばよいのか。事前準備も含め、進めかたを具体的に説明していこう。(続きはメルマガご登録の上、お楽しみください)

※本記事はメルマガ『ブラック企業アナリスト 新田 龍のブラック事件簿』の2020年12月11日号に掲載されたものです。2020年12月中のお試し購読スタートで、12月分の全コンテンツを無料(0円)でお読みいただけます。

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