1500人もの社員を「適法」でクビにした日本IBM「退職勧奨」の実態

 

「適法」とされた、日本IBMの退職勧奨事例

日本IBMは2004年、人事業績評価制度として、従業員個人の目標管理型業務評価制度「PBC」を導入した。これは、業績貢献度合に応じて評価を5段階に設定し、ボーナス額や昇給額決定の指標とするものであった。同社は2008年、この評価で下位評価となった1,500人を対象にリストラを断行し、利益を死守することができたのである。

リストラの面談担当となった各部門長宛に配布されたマニュアルには、退職勧奨の指針として次の2点が掲げられていた。

1つは、「あなたの能力と会社の現状を考慮すると、現組織において職務継続はできない」という厳しい現実を指摘すること。もう1つは、今後の転職や身の振り方の相談には親身に接し、「良き理解者」という関係を築き、相手の立場に立ってメッセージを伝えるべきと指示されている。その前提で、「お前の籍はもうない」「辞めなければ地方転勤させる」といった脅迫的な言動はNG。あくまで丁寧に説明を尽くし、充分に傾聴し、相手を導き、激励することが求められている。

さらに当該マニュアルでは、退職勧奨対象者の性格をタイプ別に類型化し、大まかな対応方針を示している。たとえば、プライドが高いタイプの相手には「客観的事実を示し、周囲からの目線を気にさせる」。怒り、泣き、愚痴など感情を表に出すタイプなら「相手が落ち着くまでしっかり話を聴いて受容する姿勢を示す」。「何でもやります」と泣きつくタイプは「気持ちは受け止めつつ、その可能性がない旨を冷静に指摘する」。そして沈黙するタイプなら「不明な点は質問を促し、期限を切って考えさせる」など、さまざまな戦略が用意されていることが見て取れる。

同社の場合、会社側はあらかじめ「たとえ負け筋であっても裁判へと進展することに対して何ら躊躇せず、徹底的に争う」との姿勢を示しているため、退職勧奨の段階でスムースに事が運びやすくなるという効果もあるようだ。なお、面談時に「今後、やりがいのある仕事を提供してもらえそうもない」「これまでの貢献について、感謝の気持ちを会社が示してくれた」「今後、これだけの割増賃金はないだろうと判断した」といった気持ちになると、対象者は退職勧奨に応じることが多いようである。

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