ワクチン確保よりGoTo「身内バラマキ」を優先した菅政権の国民軽視

 

それでは、最初に言っていた「全国民分をすでに確保している」というのは何だったのでしょうか?昨年12月18日付の厚労省の自治体説明会向けのペーパーを見ると「7月31日に米ファイザー社と6,000万人分を基本合意」「10月29日に米モデルナ社と2,000万人分を契約」「12月10日に英アストラゼネカ社と6,000万人分を契約」と明記されています。米ファイザー社は、この時点ではまだ開発途中なので「開発に成功したら」という条件付きのために「基本合意」ですが、他の2社は「契約」と書かれています。

その後、米ファイザー社は開発に成功したのですから「6,000万人分+2,000万人分+6,000万人分=1億4,000万人分」ということで、菅首相の「全国民分をすでに確保している」という言葉は、嘘ではありませんでした。しかし、これらはあくまでも「契約上」の話であって、ワクチンの現物を確保していたわけではありません。日本政府は「契約=確保」という認識だったようですが、ワクチンの生産量には限りがあります。それに、アメリカにしてもイギリスにしても「まずは自国」であって、他国への分は後回しになります。

それなのに、世界ではとっくにワクチン争奪戦が始まっていた昨年の秋、菅首相はワクチンのことなど二の次で、「GoToトラベル」で感染を全国へ拡大させただけでなく、自分の盟友でスポンサーでもある「ぐるなび」の滝久雄会長への便宜で「GoToイート」まで強行したのです。そして「基本合意」のままホッタラカシにしていた米ファイザー社との正式契約は、遅れに遅れて今年1月20日、それも当初は「6月まで」という納品時期が「年末まで」に変更されてしまったのです。

昨年、当時の安倍晋三首相は「感染症が収束し、国民の不安が払拭されてからGoToキャンペーンを始める」という自らの閣議決定を無視し、感染が拡大する中で、7月22日に「GoToトラベル」を前倒しして強行しました。そして、その後の7月31日に米ファイザー社と6,000万人分を基本合意したのです。「ワクチンを確保したから経済政策を進めた」というのなら多少は理解もできますが、この時系列を見ただけで「国民の命よりもスポンサーへの便宜」という自民党政治の実態が良く分かります。そして、こうした「国民の命など二の次」「ワクチンなど後回し」という後手後手の対応が、現在の日本の「とても先進国とは思えない状況」に繋がっているのです。

一方、昨年のうちにネタニヤフ首相自らが米ファイザー社のCEOと17回も電話交渉し、他国より高い値段で買うことを条件に早期確保をしたイスラエルでは、どこよりも早くワクチン接種が進んでいます。昨年12月19日にスタートしたワクチン接種は、車に乗ったまま順番に受けられる「ドライブスルー方式」で、すでに全国民の7割以上が接種を終えています。

イスラエルの人口は日本の10分の1なので、早く進むのは当然ですが、日本のように複数の省庁にまたがる縦割り行政ではなく、「医療保険機構」に一元化された対応がスピードを加速させているのです。2回のワクチン接種が完了した国民には、それを証明するための「グリーンパス」が発行され、イベント会場やスポーツジムなどへ自由に行くことができるようになりました。

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