ワクチン確保よりGoTo「身内バラマキ」を優先した菅政権の国民軽視

 

こうした政策がうまく進んでいるのも、すべてはネタニヤフ首相による早期の「ワクチン確保」が成功したからです。イスラエルでは、すでに全国民分を確保した上に余剰分まで出始めているため、余剰分の一部を国際的な人道支援に回しました。現時点でイスラエルからの「ワクチン支援」に合意したのは、ホンジュラス、チェコ、グアテマラの3カ国ですが、これは、無料でワクチンを送る代わりに、パレスチナと争っているエルサレムの主権に関して、国際的な場で「イスラエルを支持しろ」という外交目的の支援です。

もしも日本の首相にネタニヤフ首相くらいの政策能力があれば、目先のことしか考えない身内へのバラ撒きキャンペーンなど行なわずに、多少は高くついても昨年のうちに全国民分のワクチンを確保し、どこよりも早く接種をスタートさせることができたのです。そして、余剰分を他国への支援に回すことで、国際的な場で北方領土や竹島や尖閣諸島などの領有権を主張する時に、味方につけることができたかもしれないのです。

そんなイスラエルから2カ月も遅れて、ようやく日本にも2月12日に最初の米ファイザー社のワクチン20万人分が届き、17日から医師など医療従事者のうち4万人への先行接種が始まりました。しかし、今、この原稿を書いている2月28日の時点で、1回目の接種が完了した人数は、わすが2万8,000人だけなのです。3週間後に2回目を打つのですから、さらに時間が掛かります。日本の医療従事者は約470万人ですが、たとえ全員分のワクチンが確保できたとしても、10日間で2万8,000人とスピードで接種していたら、全員に1回接種するだけで1,680日、4年半も掛かってしまいます。

医療現場にいる医療のプロでさえ、これほど時間が掛かってしまうのですから、各自治体にワクチンを送るだけというワクチン担当大臣の「丸投げ方式」では、現場は大混乱になるでしょう。医療従事者の次は3,600万人の高齢者が対象だそうですが、このうち300万人以上は寝たきりで動くことができない高齢者なので、医療従事者が1軒1軒ご自宅や施設などを回らなくてはなりません。

ちなみに、すでに国民へのワクチン接種を始めている国々の進捗状況を調べてみたところ、複数の国を比較できる最新のものは「2月15日付」のデータしかなかったのですが、以下、紹介します。これは全国民の何パーセントにワクチンを接種したかという数字です。

各国のワクチン接種率】(2020年2月15日付

 

イスラエル 73.3%
イギリス 23.3%
アメリカ 16.8%
ドイツ 4.9%
フランス 4.4%
ロシア 3.9%
中国 2.9%
インド 0.7%
EU全体の平均 4.8%

イスラエルの人口は約900万人、イギリスは約6,700万人、アメリカは約3億3,000万人、中国やインドは13~14億人と、それぞれ人口がまったく違います。そのため「何万人に接種したか」という人数ではなく「全国民の何割に接種したか」という割合で比較してみました。

イギリスは、2月15日までに70歳以上の高齢者1,500万人の接種を完了し、現在は50歳以上に接種を進めており、こちらは4月末までに完了する予定です。そして、全国民への接種は秋までに完了すると言っています。ドイツやフランスも9月までに全国民への接種が完了する計画で進んでいます。

これらは、昨年の早い段階から「ワクチンが開発された時のための計画」を綿密に立て、ワクチンの確保から接種まで、政府が一元化して進めて来た国々です。一方、日本政府は、ワクチンの確保ですら代理店に丸投げし、各国がワクチン争奪戦を繰り広げていた時に、せっせと「GoToトラベル」や「GoToイート」で感染拡大に尽力していたのです。

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