CoCo壱バイトテロ“炎上”に4つの違和感。背景にある外食産業の構造的欠陥

 

3番目は、被害者であるはずの会社がどうして謝罪するのか、という問題です。消費者の「安心」を損ねたのだから、とにかく平謝りに謝っておくしかないというのは、分かりますが、例えばの話、会社が被害者でないというのは、バイトは仲間(内輪)だという感覚があるという理解もできます。

つまり商人として「手前どもの落ち度」なのだから、ひたすら謝るというわけです。ですが、4番目として、ここが一番不自然なのですが、企業として、「自分たちの仲間、内側の人間の不始末」だとしているにしては、個々のバイトというのは、実は「本部の直雇」ではなく、本部が業務提携している「フランチャイジーという零細企業」の「最低賃金に近いバイト」という位置付けであるわけです。

本部として「手前どもの落ち度」を一緒に謝ってくれるぐらいなら、ちゃんと「手前ども」の仲間として認識して、もう少し処遇をちゃんとすることはできないものかと思います。

そもそも賃料、光熱費、人件費込みでカレー514円(税込)というのは、物凄い無理があるわけです。勿論、現在のこのマーケットでは、514円というのは結構な高価格戦略であり、牛丼並が350円などといった価格と比べれば、強気だという解説もあるわけですが、514円とか350円という価格が成立する、しかも一等地に出店して、標準仕様の高額なマシンが入り、立派な本部事務部門のコストを吸い上げられてという構造にはやはり無理があります。

人手不足の中で、結果的にカネを出さないとなると、バイトテロ予備軍のような人間も採用せざるを得ない、けれども万が一事件を起こされるとダメージが大変なので、性悪説で締め付ける、そうなると印象が悪いので余計に人が集まらないという悪循環も想定されます。

いずれにしても、食べ物としては非常に直接原価の安いものを、薄く広くブランド料として本部が利益を集め、また薄利多売で何とか賃料や什器や光熱費を捻り出し、残った粗利の中からカスカスの人件費を払うというビジネスモデルの苦しさ、これがやはり今回の問題の背景にあるのではないかと思います。勿論、コロナ禍の問題もありますが、それ以上にとにかく外食のデフレという問題は、コロナ後を見据えながら考えていかないとダメだと思います。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より一部抜粋)

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image by: Ned Snowman / Shutterstock.com

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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