企業経営上決して馬鹿にならないのが、毎月の給料振込み時に発生する振込手数料。会社側が負担することがスタンダードのように受け取られていますが、果たしてその「義務」はあるのでしょうか。今回の無料メルマガ『採用から退社まで!正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』で、社会保険労務士の飯田弘和さんが詳しく解説しています。
給与振込時の振込手数料負担について
ある会社さんから、こんな質問を受けました。
「給与振込時の振込手数料は会社が負担しなければならないの?」
労働基準法には、「振込手数料は事業主が負担しなければならない」といった定めはありません。しかし、民法で「弁済の費用は、当事者間で特約がなければ、債務者が負担する」ことになっています。
雇用契約においては、労働者の労務の提供に対し、事業主は“賃金を支払う”という債務を負っています。したがって、“賃金を支払う”という債務の履行(弁済)のための費用である振込手数料は、原則、債務者である事業主が負担することになります。
ただし、この定めは任意規定と解されているので、事業主と労働者の間で、労働者負担とする特約があれば、振込手数料を労働者負担とすることもできます。
ここで1つ注意していただきたいことがあります。たとえ振込手数料を労働者負担とする特約があったとしても、その特約とは別に、“賃金控除協定”という労使協定を締結する必要があります。
賃金控除協定とは、所得税や社会保険料等の法令で賃金控除が認められているもの以外のものを、賃金から控除する場合に使用者と労働者代表との間で結びます。
ただし、賃金控除協定があれば何でも賃金から控除できるという訳ではなく、購買代金や社宅費等の事理明白なものに限られます。
また、賃金控除協定では、以下の2項目を定めなければなりません。
- 控除の対象となる具体的な項目
- 控除を行う賃金支払日
結論としましては、給与振込時の振込手数料は、必ずしも会社が負担しなければならないという訳ではありません。
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