調査で判明した、防災会議メンバー「女性ゼロ」の自治体が抱える大問題

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異常気象による災害が多発する今、全国の自治体に求められているのは「誰もが安心できる避難所の設置」ですが、その進捗が思わぬところで阻まれているようです。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、災害避難の現場で最も必要とされる「弱者にやさしい視点」を持つことが可能な女性が、災害対策の防災会議メンバーに選ばれにくい仕組みとなっている現状に疑問を提示。さらに女性メンバーが少なくとも1割いる市区町村とゼロの市区町村を比較して判った顕著な相違点を紹介しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

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災害対策の防災会議メンバー、なぜ警察幹部から委員を選ぶ??

8月11日から降り続いた豪雨は、西日本を中心に甚大な被害をもたらしています。消防庁によると、人的被害は合計20人(死者4人、行方不明4人を含む)、住家被害は4,454棟(全壊3棟、半壊9棟含む)だったことがわかりました(17日現在)。

毎年のように豪雨による被害が後をたちませんが、今回は比較的早く多くの人たちが避難していました。コロナ感染が爆発的に拡大し、地方自治体の職員の方たちも疲弊する中での豪雨で、かなりのご苦労もあったと思います。秋雨前線の活動が20日まで続きそうですし、9月には本格的な台風シーズンを迎えますので、少しでも体と心を休められる時間が取れることを願ってやみません。

そんな中、防災現場で「女性」たちの意見が反映されずらい状況が続いていることがわかりました。10年前の東日本大震災などを教訓に、国は防災会議などの女性委員の比率を3割にすることを求めていますが30%を達成したのは全体のわずか1.8%。2割近い市町村で女性委員が1人もおらず、女性の平均比率は8.7%だったことがわかりました(共同通信が昨年10~12月に実施した調査)。

過去の災害では、女性用の下着や着替えスペース、乳児用おむつなどの物品や設備の不足が課題となり、性暴力も発生していたことから、「現場に女性を!」と呼びかけてきたのに、いまだに「災害などの緊急事態は男性の仕事」という意識から抜け出せないでいるのです。実際、防災会議のメンバーは、警察幹部など男性中心のポストから委員を選ぶ仕組みがある、とか。なんで警察?と思うのは、私だけでしょうか?

東京大学社会科学研究所の大沢真理教授らが行った調査では、防災会議での「女性」の存在が意思決定に及ぼす影響が分析されいて、実に興味深い結果が示唆されています(2017 年度女性・地域住民から見た防災・災害リスク削減策に関する調査報告)。

この調査で、防災会議の女性委員比率は、市区町村では8%程度、都道府県では15.4%で、08年度調査の市町村2.7%、都道府県で3.4%と比較すると、目標には程遠いものの増加傾向にあることはわかりました。

しかし、その一方で本来、人口規模が大きくなるにつれて防災・危機管理部局の職員総数が多くなるのですが、女性職員はそれほど多数配置されていませんでした。

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