あの不倫官僚が原因か?日本のコロナワクチン開発を遅れさせた“戦犯”

 

高まる需要に供給が追いつかなければ、ワクチン獲得競争が激化して、ワクチン・ナショナリズムともいわれる国家エゴが蔓延する。

昨年来、輸出を渋る米国を横目に、ロシアや中国が自国製のワクチンを、アフリカ、中東、アジア、南米に売りさばき、ワクチン外交による影響力強化を図ったのは周知の通りだ。

しかし、ロシアは自国内の感染が深刻化してワクチン外交から脱落。中国製ワクチンも、二度接種した医師多数が次々と感染、死亡したインドネシアのケースもあり、効果が疑問視されている。

米中対立が深刻化する今、米国が世界にワクチンを分配するための指導力を発揮すべき局面だが、バイデン大統領にその気は毛頭ないようだ。

日本も3回目接種に向けて動き始めている。8月10日に、全国知事会の飯泉会長が3回目の接種について政府の方針を早期に示すよう要望。河野太郎規制改革担当相は同月16日、日本テレビのCS番組で「ブースター分の供給の合意はできている。近々内容を示す」と語った。

だが、合意といっても、大まかな合意か、詳細をつめた合意か、契約に至っているかどうかで、受け取り方も異なる。

これまでは、東京五輪の開催という大義名分もあって、日本向けの供給には特別な計らいがあった。

米ファイザーのワクチンはドイツのバイオンテックが開発し、ベルギーの工場で製造されている。EUは当初、域外輸出を厳しく規制していたため、日本ではスタートが遅れたが、4月から6月にかけ約1億回分が輸入され、接種が加速した。この時期に限れば、EUからのワクチン輸出は日本向けが最多だっただろう。

しかし、7月以降は輸入量が落ち込み、各自治体が希望する数量の供給ができなくなって、接種のスピードが急低下した。6月21日に本格的に始まった職域接種も、モデルナ製ワクチンの供給が予定より大幅に少なかったため、受付の一時休止に追い込まれた。

このようなもたつきを解消するため、菅首相は7月23日、ファイザー社のアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)を迎賓館に招き、10月以降に輸入されるワクチンの予定量のうち、約1,000回分の9月への前倒しを要請した。

だが、ブーラ氏は「その余裕はない」「日本は足りているはずだ」と答えたという。世界的に需要が高まる情勢を踏まえた発言だ。結局、ワクチン供給の前倒しはかなわなかった。今後のワクチン交渉の難しさを予感させる出来事だ。

本来なら、頼るべきは国産ワクチンである。開発の現状は一体どうなっているのだろうか。

バイオベンチャー企業「アンジェス」、塩野義製薬、第一三共、KMバイオロジクスの4社が開発した異なるタイプのワクチンがそれぞれ、臨床試験の段階にある。ただし、いつ実用化されるのか、そもそも実用化できるのかどうかも、判然としない。

先行するアンジェスは昨年6月に第一段階の治験を始め、今年春か夏の実用化をめざしていた。しかし、厚労省所管の医薬品医療機器総合機構(PMDA)が数万規模の大規模治験を求めたため、壁にぶち当たった。

過去にワクチンをめぐる訴訟に何度も直面した日本の製薬メーカーは1980年代以降、新たなワクチン製造を行ってこなかったため、大規模臨床試験(治験)のノウハウが蓄積されていない。一方、海外では、2000年ごろから次々と流行したSARS、エボラ出血熱、MERSなどに対応し、ワクチン開発が急速に進んだ。かつてワクチン輸出国だった日本が輸入に頼らざるを得なくなったのには、そういう理由がある。

しかし、これから何年も先まで、新型コロナの変異に対応していかなくてはならないとすると、国産ワクチンの実用化は欠かせない。

そこで考え出されたのが「非劣性試験」という代替手法だ。開発中のワクチンを投与したグループを、偽薬投与のグループと比較する大規模臨床試験の代わりに、既存ワクチン投与グループと比較する。そうすれば、数千規模ですむという。

厚労省はこの手法を薬事規制当局の国際連携組織「ICMRA」に提案。その議論のなかでほぼ合意が得られたとして、今年7月、各社に「非劣性試験」の準備にとりかかるよう、ゴーサインを出したばかりだ。少なくとも、一歩先に進んだのは間違いないだろう。

ただ、悔やまれるのは安倍政権以来、国産ワクチン開発にむけての政府の取り組みが弱かったことだ。

和泉洋人首相補佐官(健康・医療戦略室長)を議長とする「医薬品開発協議会」の下部組織として国産ワクチン開発のタスクフォースが設けられたのは、欧米の先行例でワクチンの効果に気づいた今春になってからだ。

ワクチン政策を取り仕切る和泉首相補佐官が、総理の威を借りて霞が関を差配してきたことは、安倍前首相の加計学園問題などでよく知られている。菅首相が最も頼りにする官僚だが、ファイザーなど製薬企業との交渉には手間取り、ワクチン接種の開始時期が遅れる原因となった。和泉補佐官がせめて昨春にでも国産ワクチン開発のタスクフォースをつくっておけば、状況は違っていただろう。

そもそも、現時点で、日本のような国が国産ワクチンを持っていないのは、世界への貢献という面でも、寂しい限りだ。国産ワクチンが生まれ、輸入に頼らないですめば、その分、途上国に早くワクチンが行き渡り、外交や安全保障にも寄与するはずだ。

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