なぜ日本人の給料は韓国人より年間38万円分も少なくなったのか?

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OECD加盟35カ国(2018年以降加盟の3カ国は除く)でこの20年間に賃金が下がったのは日本だけという事実を以前から指摘し、給料のアップがなければ経済成長もないと声を上げてきた、元国税調査官の大村大次郎さん。第2次世界大戦後に奇跡の復興を果たした日本は、なぜ再びこのような惨状に陥ってしまったのでしょうか。今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』では、「購買力平価」で賃金を比較すると、日本人は韓国人より年38万円分も賃金が安く、それだけ生活が苦しいというOECDの衝撃の調査結果を紹介するとともに、その元凶を「所得倍増計画」の時代から遡り暴くことを試みています。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』の2021年9月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

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日本人の給料が韓国より安くなったワケ(前編)

最近、衝撃的なデータが発表されました。2020年のOECDの調査によると、日本人の給料は韓国より安いということが判明したのです。OECD加盟国の中で、日本の平均賃金は22位であり19位である韓国よりも年間で38万円ほど安くなっているという結果が出たのです。

このOECDの調査は名目の賃金ではなく「購買力平価」です。購買力平価というのは、「そのお金でどれだけのものが買えるか」という金額のことです。賃金の額面とともに、その国の物価なども反映されます。つまり「その賃金の購買力を比較している」というわけです。ということは、日本人は韓国人よりも、38万円分も生活が厳しいということになります。なぜこのようなことになっているのでしょうか?

それはこのメルマガで何度も述べていますように、政治と財界のせいです。バブル崩壊以降、日本の財界は、雇用をおろそかにしてきました。日本は、この20年間先進国の中で賃金が上がっていない、ほぼ唯一の国です。また賃金を上げないだけではなく、非正規雇用も増大させました。先進国の中で、日本は突出して非正規雇用が多い国なのです。その結果が、「韓国よりも賃金が安い」という状態になったのです。

高度成長期の日本は雇用を何よりも大事にしていた

そもそも日本は、「雇用や国民生活を大事にする」ということで、経済成長をしてきた国です。高度成長期を象徴する出来事に「所得倍増計画」というものがあります。所得倍増計画というのは、その名の通り国民の所得を倍増させるという経済政策です。つまりは、国民の懐を潤すことに主題を置いた経済政策であり、こういう国の方針が日本に高度経済成長をもたらしたのです。

昭和35年(1960年)に池田勇人首相によって発表された所得倍増計画は、10年間で国民所得を26兆円に倍増させることを目標にしたものでした。実はこの所得倍増計画が発表された当初、経済学者、有識者の中は「何を馬鹿げたことを」というような意見を言うものも多かったのです。戦争に負けて、大きなダメージを受けた貧しい日本が、そんな奇跡のような経済成長ができるわけはない、ということです。しかし、そういう懸念をよそに、その後の日本経済は予想以上に成長し、国民所得は7年で倍増に達しました。

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