ゼットスケーラー日本・アジア代表が伝授。キリンビールの成功から学ぶマーケティング戦略

 

キリンビールのマーケティング戦略

例として、キリンビールのマーケティング戦略を見ていきましょう。

※以下はキリンビールの公開資料から引用しています。

まず目次を見てみると、「お客様主語のマーケティング」と見出しがあり、その中に3つの変革内容が書かれています。

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このサブタイトルから想像できる通り、キリンビールはいいものを作っているのに売れないという現状から、マーケティングを大きく改革したことによって国内トップシェアのアサヒビールと同等の売上規模にまで成長しました。

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その内容を1つずつ見ていきましょう。

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まずは、視点の転換です。ここがもっとも重要なポイントと言ってもいいかも知れません。

ビジネスとは基本的に、「自分の夢を実現したい!」という自分主語でスタートします。

しかしながら、お客様の全員が事業者の夢の実現を応援してくれるとは限りません。

基本的に、お客様はお客様の都合で商品を見ています。

つまり、「どうやって売るか」を企業視点で考えていては、お客様に適切にリーチすることは難しいのです。

以下も同資料内にあった図で、キリンビール社内で企画を通す際によく用いられていたものだそうです。

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A,B,Cは、すでに他社が取っているポジションで、図の部分は空いているのでその席を狙いに行こうという説明図です。

しかし、席が空いているといってもそこにお客さんが集まるとは限りません。この考え方は、完全に顧客目線が欠けてしまっているのです。

そこに気づいたキリンは、すぐさまこの考え方を転換し、全ての判断軸をお客様に置きました。

次に、全社でブランドを育成するという考え方。

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これは、組織の一体化という部分になってくるのですが、例え上層部が「お客様目線でマーケティングを!」と視点を変えて動いても、現場までその考えが届かなければ、上と下でバラバラの動きをすることになりかねません。

そこでキリンは会社と現場をつなぐ仕組みを考え、導入することでこの問題の解決を図り、「お客様目線」という視点を強化。さらには自社のブランドの育成を全社一丸となって実践していく土壌を作り上げています。

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この図は、お客様の体験を表したものです。

横軸に4つのフェーズがありますが、広告宣伝・販売、販促・製品開発と、それぞれの体験を提供するのはそれぞれ違う部署です。

ということは、それぞれが異なる視点で動いていてはお客様にとってちぐはぐな体験となってしまいます。全社でブランドを育成するという意識改革を行ったことにより、そのちぐはぐを解消しました。

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最後に、マーケティング人材の育成。

マーケティングとは一般的に、売れそうなプロダクトを開発するという風潮でした。

そのためか、求められる人材(スキル)の定義も曖昧なまま。そして答えの出し方がわからないので勝ちへのこだわりも弱くなっているという問題がありました。

そこで、キリンはマーケティング人材育成をしっかりやっていくためにそれら問題を抜本から変えて、新たな人材育成のスキームを作ろうと試みています。

詳しくは資料を見てほしいのですが、この施策が実を結び、キリンはコロナ禍でも売上を伸ばすことに成功しています。

これらキリンビールのマーケティング戦略を、以下にまとめました。

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顧客の潜在ニーズはなんなのか?これを満たしたとき、商品は売れます。

つまり、潜在ニーズこそが目的です。

そして、企業中心に考えた商品開発、組織内でバラバラな動き、マーケティングへの意識が薄いのが、現状の姿。

そこを解決するために、徹底的に顧客視点に立ち、開発プロセスの見直しや、ブランド育成の土壌形成など、抜本的な改革を行いました。

これがキリンビールのマーケティング戦略です。

マーケティングというと、どんな広告を打つか、どんなキャッチコピーを作るかといった具体的な技術に目が行きがちですが、実はもっと深く、抽象的なところから始めなければいけません。

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