被告は指導者・金正恩総書記。日本初「北朝鮮政府を訴えた裁判」の行方

 

なぜ金正恩はミサイル連射に走るのか?岸田首相は本当に脅威を自覚しているのか?

前号でも北朝鮮のミサイル連射について述べたばかりであるが、北朝鮮は19日、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)とみられるミサイルの発射を強行した。SLBMなら2年ぶりだが、北朝鮮が米軍に対する水中からの奇襲攻撃を念頭にSLBM開発を進めてきたことは明らかである。

すでに10月15日に米国防省傘下のインテリジェンス機関の国防情報局(DIA)が、北朝鮮の軍事力を総合的に分析した報告書をまとめ、「米国本土に到達能力のある長距離弾道ミサイルの発射実験を今後1年間で実施する可能性がある」と指摘したばかりである。

報告書は約80ページにわたり、核ミサイル開発を中核に据えた北朝鮮の軍事力を歴史的な変遷も踏まえて包括的に調査したもので、「実行可能な核兵器を信頼できる長距離弾道ミサイルで運搬できることを誇示することが金正恩政権の最優先の国家目標」と指摘していた。これは10月11日に金正恩朝鮮労働党総書記が、平壌で開幕した新兵器の展覧会で、「無敵の軍事力を保有し、強化していくことは、我が党の最重大政策で目標だ」と演説したことを念頭に入れての指摘である。

今回の発射は、韓国が9月にSLBM発射実験の成功を発表しており、韓国への対抗意識も背景にある。しかし、今回の発射は、米側がレッドラインとみなす大陸間弾道ミサイル(ICBM)ではなく、飛距離も600キロメートルと言われるSLBMである。バイデン政権が対話再開を優先させる立場から「短距離なら問題視することはないだろう」と踏んだバイデン政権の出方を探る目的があった。

今回発射された小型SLBMが、11日に開幕した新兵器の展覧会で展示されていた新型のSLBMであった可能性もあり、さらなる分析が待たれる。今回も日本の排他的経済水域(EEZ)の外に落下したとみられるが、磯崎仁彦官房副長官は「我が国と地域の平和と安全を脅かすもので、国連安全保障理事会決議に違反し極めて遺憾だ」と表明。北朝鮮に北京の大使館ルートを通じて抗議したとのことだが、日本政府のこのような紋切り型の抗議に北朝鮮は“屁”とも思わないだろう。

岸田首相は、今回の弾道ミサイルの発射を受け、国家安全保障会議(NSC)を官邸で開き、「敵地攻撃能力の保有も含め、あらゆる選択肢を検討するように改めて確認した」とのことだが、これまた紋切り型の発言である。北朝鮮からの核ミサイルの脅威を本当に感じているのか、日本はいつまでも座して待っているというのか、危機はそこまで迫ってきているということを自覚しなければならない。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)

北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で伝える宮塚利雄さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

image by: Alexander Khitrov / Shutterstock.com

宮塚利雄この著者の記事一覧

元山梨学院大学教授の宮塚利雄が、甲府に立ち上げた宮塚コリア研究所から送るメールマガジンです。北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で披露します。また朝鮮半島と日本の関わりや話題についてもゼミ、そして雑感もふくめ展開していきます。テレビなどのメディアでは決して話せないマル秘情報もお届けします。長年の研究対象である焼肉やパチンコだけではなく、ディープな在日朝鮮・韓国社会についての見識や朝鮮総連と民団のイロハなどについても語ります。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」 』

【著者】 宮塚利雄 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎月 5日・20日 発行予定

print
いま読まれてます

  • 被告は指導者・金正恩総書記。日本初「北朝鮮政府を訴えた裁判」の行方
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け