追悼・中村吉右衛門氏。鬼平で見せたトップリーダーのあるべき姿

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11月28日、77歳にして惜しくも鬼籍に入られた歌舞伎俳優で人間国宝の中村吉右衛門さん。多くの当たり役を持つことでも知られる吉右衛門さんですが、火付盗賊改方の長谷川平蔵を演じた「鬼平犯科帳」シリーズを代表作に推す声が多く聞かれます。スピーチのプロである森裕喜子さんもそのお一人。今回森さんは自身のメルマガ『スピーチコーチ・森裕喜子の「リーダーシップを磨く言葉の教室」』で、吉右衛門さんの鬼平を「理想のトップリーダー」と位置づけ、プロとしてそう判断する理由を独自のボイスイメージ分析を基に解説しています。

※本記事は有料メルマガ『スピーチコーチ・森裕喜子の「リーダーシップを磨く言葉の教室」』の2021年12月1日号の一部抜粋です。この続きと全文にご興味をお持ちの方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

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鬼平:トップリーダーの言語・非言語的魅力の数々

吉右衛門さま演ずる「鬼平」という存在は、トップリーダーとはこういうものである、を言語非言語で見せて、聴かせてくださいました。

言葉選びと繰り出すタイミングはごくごく自然、その上、相手と目的に応じて自然と声色を使い分けられる巧みさも持っている。

盗人を捕らえる瞬間の見せ場では、馬に跨り高らかに、早口気味に、た~っぷりと聴かせるおきまりのセリフ、

「火付盗賊改方、長谷川平蔵であ~る!神妙にいたせい!」

ほっかむりをした大勢の盗人たちは、やや!と一気に情勢にむせ返り、その後、提灯が舞い、刀と十手が重なり合う金属音が闇夜にこだまする大立ち回り。

あの高らかな声。歌舞伎の見せ場でも、鈴がキラキラと響き渡るようなお声でした。

大勢の敵味方を前にして、輝く声とセリフでしたが、もちろん、一対一のコミュニケーションの場でも決して相手を逃しません。

とらまえた難攻不落な悪党も、たったひとことで、「申し訳ございませんぬ!」と降参させてしてしまう強かなやりとり。

元盗人稼業の荒んだ人間を改心させた火付け盗賊の密偵たちは、「長谷川さま」と終生、心を入れ替えて新たな人生を歩みました。

長谷川平蔵は若かりし頃は多少ではないかなりのやんちゃをされたそうで、自分自身でもそんな過去があるからこそ、人間の酸いも甘いも腹の底からわかっていたからこそ、そんな芸当ができたのだと思います。

と、いうような時間軸をも、ひとつのセリフ、仕草の中に感じさせる役者さんでした。

言葉でのコミュニケーション力もさることながら、やはりそれ以外の、非言語、ちょっとしたしぐさや立ち居振る舞いは忘れられません。

人を見定める際の黒目の動かし方や速度、役目を隠して町を行く際の足運びや背中の角度、人とあい対する際の距離感や居住まい正座か片膝か、あるいは中腰か、立った状態か、人の話の聞き方と息づかい、相槌の打ち方、回数と角度、その際の目つき、あの声、足運び、着物の裾の揺れ具合。目に焼き付いております。

…などなどなどなど、あああああああああああああああ書ききれん言い切れん伝えきれん!!!

いわゆる、トップリーダーの「さもあらん(こうであろう)」を、実際にはそんな人は存在しないのだがこうであったらなんと素晴らしいことか、を、いとも簡単に(見えました)演じて見せてくださった、すべてを体現しておられたのが、中村吉右衛門さま、なのです。

そして、そのお体を通して長谷川平蔵という理想のトップリーダーが、私の脳裏に常に居らしたのでした。

その吉右衛門さまが、この世から、此度、居なくなられてしまわれました。

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