次は台湾、そして日本。中国支配で民主派ゼロ議席となった香港の惨状

 

そればかりか、中国は中国主導の改革で香港は「秩序が回復した」とまで自画自賛しています。そして香港立法会選挙の翌日20日、中国政府は香港の民主主義に関する白書を発表し、「香港の民主主義システムを設計し、創造し、保護し、前進させているのは中国共産党である」と主張したのです。

「愛国者」による香港議会選、親中派が圧勝 「秩序を回復」と中国

この香港の立法会選挙の結果は、中国による台湾統一がどのような結果をもたらすかということを物語っています。もし台湾が中国に支配されれば、現在の民進党は非合法化され、候補者が立候補できなくなることは目に見えています。

台湾でも「台人治台」(台湾人による台湾統治)という言葉がありますが、この香港の結果を受けて、中国共産党および習近平は「愛国者治台」の実現を狙っているということが台湾で論じられるようになっています。

もちろん中国共産党は台湾の法律にコミットできません。だから親中・媚中の国民党に接近し、民進党に対する誹謗中傷のフェイクニュースを流し、再び国民党政権を樹立したうえで民進党を非合法化し、台湾の政界を親中派一色に染めて、実質的に中国の支配下に置こうというわけです。

このように、自由な主義主張を抑え込んで、立候補の自由も奪い、ひたすら中国共産党に都合のいい人物ばかりが選ばれるという茶番を、中国は「中国式民主」と呼んでいるわけですが、先週のメルマガも述べたように、「鹿を指して馬となす」ようなものです。

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あるいは、天を指して海と言っているようなものです。こうした屁理屈によって、名前と実態がかけ離れることが、中国では非常に多いのです。また、そのことが政治の混乱や戦乱の世を招く一因となってきました。

かつて衛の国の王が孔子に対して、「先生をこの国に招いて政治を行うなら、先生は何を第一にしますか」と問うたところ、「必ず物の名前を正すことから始めます」(必ずや名を正さん)と述べました。

物の名前が正しくなければ、その定義も混乱してしまいます。名称と分限が一致していないと、君臣や上下の秩序が保てません。名称と分限の一致を求める思想を「名分論」ともいいます。そしてこの名称と分限の不一致こそが、混乱の大きな原因とされたのです。

だからいくら「中国式民主主義」と名付けたところで、実質は独裁専制主義なので、名と実が合っていません。孔子の時代から政治混乱の理由であった名と実の不一致を、現在も中国は行っているというわけです。

こうした矛盾は、今回の香港立法会選挙でも見られました。今回の投票率は前述したように、30.2%で過去最低でした。あまりに低い投票率は、投票結果の正当性を疑わせます。そのため香港政府は選挙当日、MTRやバスなどの公共交通機関をすべて無料にし、投票率を上げようとしました。

ところが一方で、武装警察を投票所に常駐させ、町のパトロールを強化することで、民主派の有権者が投票したり、中国政府に都合の悪い主張を演説したりしないように、規制を強化したのです。一方で投票を促しながら、一方で投票を阻止しているわけです。台湾の自由時報は、そのことを強く批判しています。

香港立法會選舉:港府左手打右手 立法會選舉投票率創新低不意外

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