世界的エンジニアが考える地方活性化「ソフトウェア学園都市」構想とは?

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少子高齢化で地方の衰退は進む一方。何年か後には多くの美しい里山が、黒光りする太陽光パネルの集落に変貌しているかもしれません。そんな流れを止め、地方の経済を活気づけるにはどうすればいいのでしょうか。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』で、「Windows95を設計した日本人」として知られる世界的エンジニアの中島聡さんは、今後ますます必要とされるソフトウェア・エンジニアを養成する「全寮制高専」を日本各地に作ることを提案。リモートを駆使して日本らしい環境の中で教育も仕事も可能な「ソフトウェア学園都市」構想を披露しています。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

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質問コーナー:地方の田舎を活気づける良い方法は?

Question

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地方経済の活性化する良い方法はありますでしょうか?私が住んでいたのは、30年前と生活環境がほとんど変わらないレベルの田舎です。変化といえばトンネルが開通したくらいでしょうか。そういった田舎を活気づけるには、住民の所得アップも一つの手段なのではないかと考えています。

案としては、人口が減り土地が余っているような地域ですので、太陽光で売電して所得をあげる。リモートで賃金の高い場所で働ける人を増やすために、教育環境を整える何かを考えております。地方の田舎を活気づける良い方法はありますでしょうか。

中島さんからの回答

とても難しい問題だと思います。太陽光発電の導入なども発想としては悪くありませんが、それが自然を破壊し、崖崩れを起こしやすい斜面を作るのだったら意味がありません。

私が少し前から考えている構想に、日本中に複数の「ソフトウェア学園都市」を作るというアイデアがあります。これからますます重要になるソフトウェア・エンジニアを養成するための高専(5年制)を、全寮制で、日本各地(10~20箇所)に作るというアイデアです。それも、東京近郊、大阪近郊などはあえて避け、少子高齢化と過疎化に悩む地方自治体に、国のお金で立派な教育施設を作るのです。

最初の2年間は徹底的に英語と数学を叩き込み、残りの3年間はCourseraなどのオンラインコースを活用して、コンピュータ・サイエンスの英才教育を施すのです。オンラインコースを活用する理由は、英語で学んで欲しいのが一番の理由ですが、コンピュータ・サイエンスを教えることが出来る教師不足を補う面もあります。

門戸は理数系の強い子供たちに大きく開き、成績が良い子には返済不要な奨学金を渡します。それと並行して、各学校の周りにオフィスパークと住宅地を作り、そこにベンチャー企業を誘致します。

卒業した子供たちが、それらのベンチャー企業で働くことはもちろんのことですが、そのままその場所に残って、海外のソフトウェア企業でリモートで働くことも可能なので、そんなライフスタイルを魅力的にするための工夫もとても重要だと思います。

ちなみに、学園都市の中は、一般の自動車は入れず、乗り放題の自動運転バスが24時間提供されており、歩行者・自転車・車椅子が安全にどこでも移動出来る環境が整備されています。

学園都市の外側には、農作地が広がり、地産地消の維持可能な社会を目指します。ただし、労働者の高齢化が進む日本の農業は、今の形のままでは成り立たないので、彼らの持つ(おいしい野菜や食肉を作る)ノウハウを失わずに、いかに大規模化・自動化するかが成功の鍵を握るだろうと思います。

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【著者】 中島聡 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週 火曜日(年末年始を除く) 発行予定

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