米の“オオカミ少年”国務長官「ロシアが来る」「中国も危険」にかき回される世界

 

米国による裏工作

第2に、この反体制デモを米国が積極的に支援してきたことに注意を向ける必要がある。それが公然かつ本格的になったのは昨年12月中旬で、米国務省のビクトリア・ヌランド国務次官補(欧州・ユーラシア担当)が10日キエフ入りし、野党指導者たちと会談し、また独立広場に行ってデモ参加者にお菓子を配った。続いて14日にはジョン・マケイン上院議員がキエフに姿を現し、ヤツェニク、クリチコ、チャグニボクの3人と会談し、翌日にはやはり独立広場にそのチャグニボクを伴ってデモ隊を激励に行った。

ヌランドとマケインに共通するのは、親イスラエルのネオコンの生き残りということで、彼らが反ユダヤのチャグニボクと会談して記念写真まで撮らせているのはどういうことなのか、理解に苦しむが、まあ当時は市民デモに乗じて政権打倒まで持っていくのに、利用できる者は誰でも利用しようということだったのだろう。これ以降、野党指導者の下には米国のUSAIDなど政府機関や民間財団から豊富な資金が注ぎ込まれることになった。

マケインは「共産主義の撲滅」「全世界に民主主義を」といった冷戦時代そのままのイデオロギーの持ち主で、これまでも昨年5月にはシリアを訪れて反政府軍の幹部と面談し支援を表明、8月には米国がシリアを空爆してアサド政権を崩壊させるべきだと強く主張した。他方、ヌランドの夫はネオコンの代表的論客である歴史家のロバート・ケーガン=米ブルッキングス研究所上席研究員である。1997年にネオコンの巣窟と言われたシンクタンク「アメリカ新世紀プロジェクト」を立ち上げ(マケインもメンバー)、01年の9.11の1年前には米国が地球的責任を果たすための軍備大増強を提唱する米防衛再編計画を発表、その際にそれを短期間に実現するには「新たな真珠湾攻撃のような破滅的な出来事」が起きることが必要であるかのごとき一句を盛り込んだので、後々「ネオコンによる9.11自作自演」説の論拠にされたりもした。

オバマ政権になってもヌランドのようなネオコンそのものが国務省の政策を牛耳っているというのは驚きだが、彼らこそがロシアにとって死活的なウクライナの欧州化を強引に推進しようとする張本人なのであって、彼らの発想からすれば、ネオナチに資金を提供して親露政権を崩壊に導くなど当然ということになる。

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