黒幕は習近平か。露のウクライナ侵攻で台湾併合への士気を高める隣国の目論見

2022.03.24
 

中国にとって重要なケーススタディとなるウクライナ戦争

既に台湾は、ロシアのウクライナ侵攻を台湾への侵攻に繋げようとする中国への警戒感を高めているようだ。台湾の蔡英文総統は、ウクライナを支持し、ロシアを批判する立場を明確にしているが、特にロシアのウクライナ侵攻によって中国が士気を高めることを意識し、台湾海峡周辺における警戒を強化するよう軍に指示した。

しかし、それは台湾だけではない。日本や米国、オーストラリアなども同様だ。ウクライナ周辺と台湾周辺では地政学的環境も米軍の規模も大きく異なり、中国がすぐに海洋覇権をエスカレートさせるわけではないだろう。だが、中国にとって台湾海峡や西太平洋は自らのお庭であり、米中の軍事力が拮抗している環境下では、中国にとってウクライナ問題は台湾侵攻を考える際の重要なケーススタディとなろう。米国や日本、オーストラリアなどはいっそう中国への警戒感を強め、対中国軍事包囲網を強化する必要がある。

一方、経済面においても、習近平はロシアを支援する方針を明らかにしている。習近平は2月、「プーチンは台湾の武力統一に我々に支持を表明したことはないので、我々は当面の間はウクライナへの軍事侵攻については態度を示さないが、米国など欧米陣営によるロシアへの経済制裁は明らかな違法であり、今後はロシアへの支援を強化する」との方針を明らかにした。トランプ時代から激化している米中貿易摩擦に加え、中国を唯一の競争相手と位置づけるバイデン政権が人権問題を軸に中国に強硬姿勢を取ることにより、米中対立は悪化の一途をたどっている。そして、英国やオーストラリア、カナダなど他の欧米諸国もそれに加わることで、中国を取り巻く経済状況はいっそう複雑さを増している。

ロシアによるウクライナ侵攻の影響は当事者間だけではない。既に、それは米国や中国を巻き込むグローバルな大国間競争の場であり、今後は経済力でロシアを圧倒する中国がどう出てくるかが注目される。ウクライナ問題の黒幕はプーチンではない、習近平だ。

image by: thelefty / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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