追い詰められたロシアが爆発。プーチンを疑心暗鬼にしたNATOの大罪

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病院や学校といった民間施設が攻撃対象にされるなど、深刻な人道危機に晒されているウクライナ。許されぬ蛮行に走った独裁者として記憶されることが確実なプーチン大統領ですが、何が彼をここまで追い詰めたのでしょうか。今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』では元国税調査官で作家の大村大次郎さんが、この戦争に関して絶対的に悪なのはロシアだとした上で、NATOの側にも大いに反省すべき点があるとし、その理由を解説。さらに今この段階で西側諸国とロシアが信頼感を構築する努力を怠れば、第三次世界大戦の勃発も否定できないと警告しています。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』の2022年4月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

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ロシアは”仲間外れのジャイアン状態”だった

今回のロシアのウクライナ侵攻について、どうしてもお伝えしたいことがあり、今号では予定を変更してこのことについて少し述べさせてください。

まず今回の戦争について、筆者は絶対的にロシアが悪いし、ロシア軍は一刻も早く停戦し、撤退すべきだと思います。ウクライナの人々には、どうにか頑張って生き抜いていただきたいし、日本からも多くの人が心を痛めていることを伝えたいし、些少ながら筆者もウクライナ大使館に寄付をさせていただきました。

今回のロシアの侵攻というのは、まるで東西冷戦時代のソ連のような蛮行であり、今の時代にこういう所業が許されていいわけはありません。プーチン大統領は完全に判断を誤っていますし、歴史的な責任を負うことになるでしょう。

が、今回の戦争について反省しなければならないのは、プーチン大統領だけではないのです。NATOの側にも大いに反省すべき点があるのです。

今回の戦争の発端は、ウクライナがNATOに加盟しようとしたことに対してプーチン大統領が怒ったというものです。

あまり論じられることはありませんが、このNATOという存在は、時代錯誤気味なのです。そもそもNATO(北大西洋条約機構)というのは、第二次大戦後の東西冷戦時代に、ソ連や東欧諸国の共産圏国家群に対抗するためにつくられた軍事同盟です。仮想敵国は、ソ連や東欧諸国ということになっていました。

が、ご存じのように、ソ連は今や存在しない国ですし、東欧諸国には共産主義国家はなくなりましたので、NATOにとっての「敵」はいなくなったはずなのです。かつてNATOに対抗してソ連や東欧諸国でつくられていたワルシャワ条約機構という軍事同盟は消滅しています。つまり、NATOにとってもはや敵はいなくなったのです。

「敵はいなくなったけれど、国同士の同盟関係は大事だからこのまま続けていこうよ」ということで、NATOは今も続いているわけです。もちろんNATOがそれだけの存在であれば、あまり問題はないと言えます。

が、NATOは、仮想敵国としていたソ連がいなくなった代わりに、ロシアを事実上の仮想敵国として存続しているのです。NATOに「ロシアを仮想敵国とする」という明確な指針があるわけではありませんが、NATOのこれまでの経緯を見ると、「ロシアに対抗するための軍事同盟」という性質が如実にあるわけです。

ロシアから見れば、「自分たちはソ連とは違うんだし、東西冷戦のような西側諸国を敵対視する政策はやめたのだから、いつまでもロシアを仮想敵国とするのはやめてくれ」ということだったのです。

ソ連崩壊以降、ロシアは西側諸国と積極的に交流し、不完全ながらも民主化を進めました。貿易も年々拡大し、今ではヨーロッパのエネルギー資源の重要部分をロシアが賄うほどになっています。人的な交流も盛んですし、かつて鉄のカーテンで閉ざされた「東西冷戦時代」のソ連とは明らかに違います。

にもかかわらず、NATOは基本方針を変えずにここまで来てしまったのです。NATOというのは、ヨーロッパの大半の国々とアメリカが加盟している世界最強の軍事同盟です。その世界最強の軍事同盟から、いつまでも仮想敵国とされているのは、気味のいい話ではありません。

考えてみてください。第二次大戦で敵国だったからといって、アメリカ、韓国、中国が、日本を仮想敵国とした軍事同盟を保持し続けていたら、日本としては相当、気分が悪いですよね?もちろん、ロシアと日本ではかなり状況が違いますから、こういう比較は乱暴ではあります。ただ、周囲の国々から仲間外れにされるということは、その国としては絶対に面白くはないはずです。

しかも「世界最強の軍事同盟」から仲間外れにされ、敵視されているのです。恐怖さえ感じていたかもしれません。

今のロシアというのは「仲間はずれにされたジャイアン」のような状態だと言えます。ジャイアンといえども、みんなから仲間外れにされれば、不安になり恐怖を覚えるでしょう。そして、一番近くにいた奴をつかまえて殴りかかった、それが今回のウクライナ戦争ではないでしょうか?もちろん、ウクライナとしてはたまったものではありませんが。

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