ウクライナ侵攻で潮目が変わった。来る「超円安」と“戦争の時代”を生き残る経済理論とは

 

「戦争の時代」の経済理論

戦争になると、ある国の生産能力が落ち、かつ、軍事・難民などの消費が増えることになる。このため、供給力が落ち、需要は拡大するので、戦争当該国以外では、景気が良くなるはずだ。

今、経済学者・評論家は、世界がリセッションになると、不景気になると騒いでいる。それは間違いだ。どうして、戦争特需ということを見ないのか不思議である。戦争が始まって以来、現在までに米国は50億ドルの兵器をウクライナに供与している。

対戦車ミサイルのジェベリンは、1発1,600万円もするが、5,000発以上も供与している。そのジャベリンを1ヶ月で400億円以上も使っている計算になる。

というように戦争は、当事国にとって、非常にカネのかかる行為である。T-72やMIG29を出した東欧諸国に代わりの米国製戦闘機や戦車を安値で渡している。米国軍の装備から出したので補充のため、国防総省はメーカーを呼んで、増産の指示を出している。

侵略戦争を起こしたロシアより、ウクライナを助ける欧米の方が最新鋭兵器なんでカネを使っている。戦争は最大の公共事業である。この効果は絶大だ。

米国は、現在までの供与総額0.5兆円であり、欧州諸国も0.2兆円程度の供与をしている。まだ、2ヶ月ですから、年間では5兆円以上の供与になるはず。

このため、米国では、財政拡大で国債買取の金融緩和を行い、それを中和するために大幅な利上げになる。長期国債金利も上がることになる。FRBは、今の内に資産縮小をしないと資産が大幅に増えることが予想できるので、5月から資産売却としたのである。近い将来は資産が積上がることになる。年末までには株価も元に戻すはず。

別の見方をすると、ウクライナのGDPは1,555億ドルで20兆円であり、IMFによると、この半分がなくなる。人口4,159万人で500万人が他国に避難している。ロシアのGDPは14,785億ドルで177兆円でこの20%がなくなる。ということで、35兆円と10兆円の45兆円の穴が開く。この穴埋めを世界が行うとみるべきである。2国以外での経済効果は大きいとみるべきだ。

ということで、軍需企業だけではなく、食料品、衣料品など多品目の供給が必要であり、これだけの追加供給の必要が出て、米日欧などの多くの企業に大量のカネが来るはずだ。

ロシアサイドでは、中国企業やインド企業に、大量のカネがバラかまれている。このため、中国もインドもロシアを非難しないのである。この両方の経済圏での経済効果は大きい。特にロシア経済圏の効果が大きいので、発展途上国や新興国は群がる。

今までのグローバル経済では、逆で世界全体で生産力が上がり、消費は一定なので、供給>需要になり、コストの安い国に生産が移り、このためデフレになっていた。

しかし、戦争になると、逆で供給<需要となるので、インフレになるので、物価高騰を抑えるために、自国の安定的な供給が必要になる。フェーズが移ったのだ。この指摘をしないのは、経済学者の怠慢だ。

このため、戦争の時代は、この供給<需要の状況を見越した経済対策を打つ必要がある。グローバル経済の時代は、供給力を削減するために価格競争をさせて、工場を減らす必要になる。このため、自由化が必要で価格競争させることが正解になる。

しかし、戦争の時代は供給<需要になり、供給力を上げる必要になる。この時は、安定供給の方が正解で、自由化は間違いになる。

戦争の時代になり、本格的な統制経済の時代になったのである。このコラムでは、前から統制経済になるとしてきたが、とうとう、その時代が来たようである。

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