長期休暇取り消しで発生したキャンセル料を会社に請求できるのか?

Red vacation write on white calendar marked for remember and target time to long vacation and relax time.
 

ポイントは会社の「時季変更権」です。ではまず、そもそも「時季変更権とは何か」についてお話します。

社員には有休を取る日を指定する権利があります(例えば、「来月〇日に有休取ります」みたいな感じですね)。これを「時季指定権」と言います。

これに対して会社には社員が指定した日を変更する権利があります。これを「時季変更権」と言います。例えば、社員が取りたいと言っていた日にどうしても取らせられない事情があれば日にちを変更することができるということです。

ただし、なんでも変更できてしまうと社員は有休を取りづらくなってしまうため「どうしても取らせられない事情」があるかどうかが厳しくみられます。

今回の裁判では「どうしても取らせられない事情は無いでしょ」と判断されたのです。具体的には次のような点からでした。

  • いったんは長期休暇を承認しており、その時期に取得しても問題が無いと判断している
  • その後になんらかの事情が発生してその時期に取得が難しくなったことの説明が無い(そういった事情が発生したとも思えない)
  • よって会社が長期休暇を取り消す(時季変更権)ことは認められない

この「時季変更権」というのは私もよくご相談をいただくのですが通常は認められることはほぼありません。

「その日は忙しいから別の日にしてくれ」というのはよくある話ですが「忙しい」くらいで認められることはまず無いと思ったほうが良いでしょう。(もちろん、本人が「同意」すれば変更してもらうことも、そうお願いすることも問題はありません)。

いかがでしょうか?有給休暇ほど、経営側と社員側で意見が対立する制度はおそらく無いかも知れません。

経営側は「取らせたくない」。社員側は「取りたい」。

これに対して今までは社員側が不利でした。「なんとなく(有休を)とりづらい」という謎の雰囲気から「有休は取らないのが当たり前」になっていたからです。

それが今では大きく変わりつつあります。ちょっとネットを検索すれば「有給休暇は社員の権利です」「アルバイトは有休無いは嘘!」などいくらでも出てきますし、法律も「5日間は強制取得」に大きく変わりました。

「有休を取らせたくない」はもはやほぼ詰んでいると言って良いでしょう。であれば、今後はいかに有給休暇の取得を「戦力化していく」かが大切になります。

半日や時間単位での取得を可能にして利便性をあげるとか、長期で連続して取得できるようにして(今回の話のあとにこう言うのもなんですが)リフレッシュ効果をあげるとか、家族やパートナーの記念日を有休に指定してプライベートを充実してもらうとか。

いずれにしてもその効果は仕事にも良い影響を与えるはずです。

有給休暇を経費ではなく投資と考えるといろいろと工夫の余地があるかも知れませんね。単に「消化」してもらうのではない、「取得の戦力化」を目指してみてはいかがでしょうか。

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【社員10人の会社を3年で100人にする成長型労務管理】 社員300名の中小企業での人事担当10年、現在は特定社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツを「わかりやすさ」を重視してお伝えいたします。 その知識を「知っているだけ」で防げる労務トラブルはたくさんあります。逆に「知らなかった」だけで、容易に防げたはずの労務トラブルを発生させてしまうこともあります。 法律論だけでも建前論だけでもない、実務にそった内容のメルマガです。

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【著者】 特定社会保険労務士 小林一石 【発行周期】 ほぼ週刊

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