エアコン25℃で月4000万円の人件費節減に成功。姫路市役所の取り組みが話題、電気代7万円増より遥かに大きいメリット

2022.07.25
by たいらひとし
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アメリカやヨーロッパ、インドなど世界規模の気温上昇が報じられる中、日本でも猛暑の足音がすぐそこまで迫っている。そんな中、兵庫県姫路市役所が行ったというある取り組みがSNSで話題になっているという。それは「エアコンの設定温度を25℃にしたら月4000万円の人件費節減になった」というもの。果たしてどういうことなのだろうか。

エアコン25℃設定で人件費大幅削減の皮肉

2005年の夏、地球温暖化対策から始まったクールビズ。それに伴い環境省が「冷房時の室温28℃」と決めたことから、日本のオフィス環境は「エアコンの設定温度は28℃にしなくてはならない」雰囲気になってしまった。

それに対し、「労働環境を快適にして仕事の効率を高めたい」との思いから、働き方改革の一環として“異を唱えた”のが姫路市。

元医師である清元秀泰市長は「エアコン設定温度を28℃から25℃に下げる」ことを発表。2019年の夏を25℃で乗り切った。

マネー現代によると、「姫路市役所はおよそ4000人が勤務しているが、光熱費は7万円増えた」というものの、「残業時間は平均で2.9時間減り、これを人件費に換算すると4000万円になる」という。

光熱費は上がってしまったが、その見返りは大きすぎるくらいの価値があったといえそうだ。削減できた人件費はもちろん市民が払っている税金である。

職員に行ったアンケートでも、25℃の温度設定がちょうどよく、業務効率と就業意欲を向上させ、勤務後の疲労感の軽減に繋がったことが分かったとしている。

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28℃設定の勘違い。科学的根拠は一切なしという事実

そもそもなぜエアコンの設定は28℃に決められたのだろうか。

実は「建築環境衛生管理基準」と労働安全衛生法「事務所衛生基準規則」の「室内の温度を17度以上28度以下」という原則の28℃の限界を基準にしたもので、科学的根拠は一切ない。

導入当時環境省の担当課長で、現在は衆議院議員である盛山正仁氏は、法務副大臣時代に出席した会議の中で、「科学的知見をもって28℃に決めたのではない。なんとなく28℃という目安でスタートした」と告白。

温度の見直しに言及したが、その後、環境庁側が「見直しを検討しない」という見解を示したことで、現在に至っている。

夏場の室内の最適な温度は、快適さの国際基準ASHARE55で22〜26℃とされている。

建築と健康の関係を研究する慶應義塾大学理工学部の伊香賀俊治教授によると「室内温度28℃は快適さとは遠く、あくまでも我慢している状態だ」という。

エアコンメーカーダイキンのホームページによると、環境庁が基準とする28℃とは室内の実際の温度のことで、エアコン温度設定ではない。外気温の影響で室温が上昇すると、実際の室温はエアコン温度設定より高くなる場合が多いとしている。

実際に28℃に設定しているオフィスで働く人の中には、汗をかいている人も多く、デスクで小さな扇風機を回している様子もみられる。快適だとは言い難い環境なのだろう。

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もちろん、夏場の電力逼迫が叫ばれる中、設定温度を下げることが必ずしも推奨されるわけではない。しかし、残業の減少、仕事の効率アップなど多くのメリットを得ることができるのであれば、「28℃に設定しなければいけない」という常識は変わってくるかもしれない。

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