習近平がバイデンから得た大戦果とは?ロシア一人負けの米中融和劇

 

ただこの会談で注目すべきは、米中双方が「大国としての役割」を意識させたことだ。米中の協力が国際社会の利益でもあるという視点が各所にちりばめられていたのだ。これは中国側が繰り返してきた「対立よりも大局を」という呼びかけに、ある程度アメリカも応えたと理解できる。CCTVが報じた習近平の言葉から、その部分を引いてみよう。

「世界はいま大きな歴史の転換点にあり、各国はかつて経験したことのないチャレンジとチャンスに直面している。両国はこの観点に立って中米関係を処理しなくてはならない。中米関係はどちらが勝ち、どちらが負けるというゼロサム思考ではいけない。中米はともに成功することが互いにとってチャンスでありチャレンジである。広い地球は中米それぞれの発展と繁栄を受け入れてくれる。両国は相手国の政策と戦略的意図を正しくとらえ、対抗ではなく対話を、そしてゼロサムではなくウインウインの構図を基調とすべきである」

これに対してバイデンは、「大国のリーダとして、われわれは責任を共有している。中国とアメリカは互いに相違点を管理できることを示し、競争が衝突に至らないようにしなければならない。世界の差し迫った課題に共に取り組んでゆくためにも互いに協力しなければならない。これは両国と国際社会のために非常に重要なことだ」(シンガポールCNA)と答えている。

習近平は、さらに「良き政治家はどのように国を率いてゆくべきかを考えるとともに、他国とそして世界とうまくやってゆく方法を考える必要がある」(シンガポールCNA)とも付け加えている。

中国側が長文で会談の中身を報じたのに対してアメリカ側の発表はそっけないものだったが、そのことも会談の成果が中国側に大きかったことを示している。世界のメディアも概ねそうしたとらえ方をしたのではないだろうか。

例えば、インドのNDTVは、「3年ぶり米中首脳会談でバイデン大統領と習近平国家主席はウクライナに対し核兵器を使用しないよう足並みをそろえてロシアに警告しました。長時間に及んだこの首脳会談では、両国の緊張関係を衝突に発展させてはならないという認識で一致しました」と伝えている。またシンガポールCNAは頭で「両首脳は相違点をうまく管理し衝突を回避することが大切だと述べました」と報じている。

ドイツZDFにいたっては、「両大国は経済面と軍事面でライバルであり関係は損なわれています。しかし会談では予想を超える歩み寄りもありました」と、会談の成果の大きさに焦点を当てたのである。

もちろん、会談が和やかに終わったからといって米中の対立が一気に解消されるわけではない。両国はすでに構造的にも対立が避けられないライバル関係にあり、米議会は対中強硬姿勢で一致し、世論もそれを後押ししているのだ──
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2022年11月20日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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