撤退の意思なきプーチンは核兵器を使う。人類が2023年に迎える正念場

2022.12.22
 

友好国からも聞かれるようになったロシアへの懸念

自ら仕掛けた戦争が自らの首を絞める結果になっている状況に、ロシアの友好国からもロシアへの懸念が聞かれるようになった。たとえば、9月にプーチンと会談した中国の習国家主席は、ウクライナ問題について終始無言を貫き、プーチン大統領が「中国の我々への疑念を理解している。中国の中立的な立場に感謝する」と伝え、中露間で亀裂が生じていることが明らかになった。

習国家主席は11月上旬にドイツのショルツ首相と北京で首脳会談を行った際、欧州での核戦力の使用に反対すると立場を明確にし、11月のバイデン大統領との米中首脳会談の席でもウクライナでの核兵器使用や威嚇に反対すると明確な意思を示した。また、インドのモディ首相も9月、ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムでプーチン大統領と会談し、「今は戦争や紛争の時代ではない」とウクライナ侵攻を批判し、同月、国連総会の場でインドのジャイシャンカル外相もウクライナ侵攻によって物価高やインフレが生じたと不快感を示した。

既に、ロシアに勝ち目はない。そうであればできるだけ早いうちにウクライナから撤退し、ロシア国家が受けるダメージを最小化するようプーチンは動き出さなければならない。しかし、どうも諦めるつもりは一切ないようだ。

米国のヌーランド国務次官は12月はじめ、プーチンはウクライナの電力施設への攻撃を続けるなど卑怯な手段を徹底し、今後の和平協議についても真剣に考えていないとの見解を示した。ロシア大統領府クレムリンのペスコフ報道官も、ウクライナ侵攻で占領した地域を同国政府がロシア領と認めない限り、紛争解決に向けた進展はないとの見解を示し、ゼレンスキー大統領がクリスマスまでに軍を撤退させるよう呼び掛けたのに対し、ロシアはそれを拒否した。

今年以上に核戦争のリスク高まる2023年

そして、今日相変わらず非欧米諸国の態度がプーチンを安心させている。たとえば、習近平国家主席は11月下旬、エネルギー分野でロシアとの関係をより緊密にし、国際的なエネルギー安全保障の安定に貢献していく意思を表明し、インドのジャイシャンカル外相も同月、モスクワを訪問してロシアのラブロフ外相と会談し、ロシア産石油の輸入を継続するなどエネルギー分野での協力を拡大させていくことで一致した。

さらに、パキスタンの石油担当大臣も12月上旬、ロシアから割引価格で原油やディーゼル燃料などを購入すると明らかにした。世界的なエネルギー価格が上昇する中、中国やインド、パキスタンなどにはエネルギーを確保しておかなければならないという切迫した事情があり、安価なロシア産原油などは極めて魅力的に映る。

結局のところ、プーチンは自分で蒔いた種で自爆しているわけだが、全く反省している様子は見えない。それどころか2023年もこの戦争を続ける意思で満たされており、今後さらにロシアの劣勢が顕著になれば、核使用のリスクは間違いなく上がるだろう。来年は今年以上に核戦争の可能性は高いと言えよう。

image by: Shag 7799 / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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