トヨタは特別扱い?辛口評論家・佐高信が疑問視するメディアと検察の忖度

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自動車の専門誌『ベストカー』が、トヨタ自動車の豊田章男社長へのインタビュー企画で客員編集長就任を要請。快諾した豊田氏に対し、「乗っ取りまで画策しているのでは?」と疑問の目を向けるのは、辛口評論家として知られる佐高信さんです。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』では、広告の力で、トヨタの「異常」を指摘できるメディアが少ないと批判。中国敵視の政策の中で、中小企業に対しては強引な捜査や偏見での逮捕はあっても、日本製鉄が提訴した特許権侵害に関する事案について、トヨタが問題視されることはないと、司法当局の忖度も疑っています。

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豊田章男の暴走

トヨタの社長、豊田章男はともかく批判が大嫌いで、インタビューもほとんど受けない。そのうえ、今度は『ベストカー』という雑誌の乗っ取りまで画策しているという。異常である。

しかし、それを「異常」と指摘するメディアは少ない。大体、株式を公開しているトヨタで、なぜ、当然のように創業者の一族がトップを続けるのか。

『週刊東洋経済』の1992年2月15日号が「自動車大手の売上高に占める給与(有価証券報告書ベース)の比率」を示している。「トヨタ自動車は91年6月期で0.9%、日産は91年3月期で2.1%、本田技研が同1.6%、マツダが同1.1%といずれもトヨタを上回る。ちなみにソニーは1.9%だ。また製造原価に占める労務費の比率を見ても日産は9%でトヨタの6%より高い」。

つまり、トヨタは人件費をケチっているのである。休みにしても、本田が積極的に有給休暇を消化させようとしているのに対し、トヨタはそれを渋っている。

比較しては本田宗一郎に失礼だが、豊田章男には、オヤジと呼ばれた本田の次のようなエピソードは望むべくもない。

「ある年の4月なんですけど、オヤジさん、いつものように白い作業服着て、工場のあっちこっち飛び回っていたんですよ。そして、仕事を覚えようとわきめもふらずに部品と格闘していた新入社員に声をかけたんです。そしたらまだ社長の顔を知らないその社員が言っちゃったんですよ。『おじさん、だめだよ!今必死なんだから』って。そばにいた工場長が真っ青になって駆けつけて叱りつけようとしたんですが、オヤジさん、それを止めましてね、『一生懸命でいいじゃないか。俺、こんなやつ見るとうれしくなっちゃうよ』って。みんなすごく感激しました」

NHK取材班編『技術と格闘した男 本田宗一郎』(NHK出版)に出てくる話である。

私はよく、本田と松下幸之助を対比させて、その違いを語る。本田は社員を1つの考え方でまとめることを嫌い、松下は逆に、社員を金太郎飴のように同じ考えにした。本田は、軟禁施設みたいだとして、社宅をつくることに反対したが、松下は社宅に疑問を持たなかった。

豊田はまさに松下型であり、広告の力もあって、メディアは松下や豊田を批判しない。拙著『統一教会と改憲・自民党』(作品社)でも言及したが、中国を敵視する非現実的な経済安保法は甘利明や高市早苗が推進の旗を振った。

その過程で、中小企業の社長らが突然逮捕されるという事件が起こった。初公判の4日前に起訴が取り消される強引で偏見に満ちた見込み捜査だったが、中国の宝山製鉄の無方向性電磁鋼板を採用しているトヨタが問題になることはない。日本製鉄が、宝山が特許権を侵害しているとトヨタに申し入れているのに、のらりくらりなので、日鉄は訴訟を起こしたのである。

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