なぜ、靴の中なのに「靴下」なの?校閲のプロが教える正しい日本語

 

「恋は下心、愛は真心」って?

漢字は日本に入ってくると、日本特有の意味を持つようになります。「下」にも、「あらかじめ~する」「ひそかに~する」という意味が加わってきたのです。

「下調べ」と言えば「あらかじめ調べておくこと」です。「下心」は「心の奥深くに思っていること、心底、本心」「心に隠している企み」など意味です。

「恋は下心、愛は真心」などと言われるのは、「恋」と「愛」の中にある「心」の位置をもじったことば遊びです。

「ひそか」という意味が、物事の裏側、遮られて見えない部分、内側を指すようにまったのです。包まれている部分、他のものでおおわれて隠れている部分のことも「下」で表すようになりました。

おしゃれは、隠れて見えない部分にこそ

「下着」ということばもここから派生し、「表に着る衣服によって他人の目から隠される、あるいは大部分が隠されてしまう衣服の総称」なのです。服の下に着ているから、という説もあるようですが、人の体から見ると肌の上です。その意味では「肌着」ということばはまさに言い得て妙ですね。

靴下も下着と同様、靴に隠れて見えない部分にはくものだからなのです。「下」は必ずしも「上下」を表すことばではないことが、おわかりいただけたでしょうか。

ちなみに現存する最古の靴下は、17世紀後半頃の、水戸・徳川家所蔵の木綿の長靴下と言われています。当時それを「メリヤス足袋 (たび) 」と呼んでいたそうです。メリヤスの語源は、スペイン語のmedias、ポルトガル語のmeiasといわれ、ともに「靴下」の意味です。

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未來交創株式会社代表取締役/文筆家 朝日新聞 元校閲センター長・用語幹事 早稲田大学卒業、事業構想大学院大学修了 十数年にわたり、漢字や日本語に関するコラム「漢字んな話」「漢話字典」「ことばのたまゆら」を始め、時代を映すことばエッセイ「あのとき」を朝日新聞に連載。2019年に未來交創を立ち上げ、ビジネスの在り方を文章・ことばから見る新たなコンサルティングを展開。大学のキャリアセミナー、企業・自治体の広報研修に多数出講、テレビ・ラジオ・雑誌などメディアにも登場している。 《著書》 『マジ文章書けないんだけど』(21年4月現在9.4万部、大和書房)、『きっちり!恥ずかしくない!文章が書ける』(すばる舎/朝日文庫)、『漢字んな話』(三省堂)など多数。

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