中国とロシアを引き離せ。ウクライナ戦争「停戦」に必要な3つの条件

rz20230329
 

3月31日で開戦から400日となるウクライナ戦争。一刻も早い停戦が求められる中、ついに中国が仲介役に名乗りを上げましたが、国際社会はこの先、二国間の和平に向けどのように動くべきなのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、停戦に必要となってくる条件を3つ挙げ、それぞれについて詳しく解説。さらに岸田首相のキーウ訪問のタイミングが最悪だった理由を明かしています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2023年3月28日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

習近平というカードを利用して解く。ウクライナ和平と各国政情の方程式

ウクライナ和平に関して、やや動きが出てきました。現時点では、プーチンと習近平の側に和平を急ぎたい事情があり、G7の特にバイデン、スヌクと岸田の周辺には和平を遅らせたい事情があるように見えます。

まず習近平ですが、大きく3つの理由から和平工作に乗り出していると考えられます。1つは、大国中国として、この複雑なウクライナ=ロシアの紛争を仲介して、調停に成功すれば国際社会の中での存在感をより高め、内外への政治的影響力を高まることが出来る、そのような計算があると思われます。

2つ目としては、現時点では、まだ化石燃料に依存する中国としては、国際的なエネルギーの市場価格が紛争のために高騰している現状は、何としても変えたいと思われますし、ロシアからの輸入も堂々と行いたいと考えていると思われます。この戦争というのは、中国経済としては、大きなマイナスだということです。

3つ目としては、復興経済です。ウクライナの復興における特に建設、インフラ回り、プラント周りに関して、中国は思い切り投資をして、思い切りリターンを回収することを期待しているに違いありません。その延長として、一帯一路の構想の中核としてのウクライナを改めて中国と政治的にも経済的にも強く位置づけることを考えていると思われます。

一方で、プーチンの側としては、やはり2024年の大統領選にもう一度出馬して後6年、つまり2030年まで政権を担当するということを至上命題にしていると考えられます。そのためには、戦闘状態が続き、国内に厭戦気分が出るよりは、有利な局面で戦争を集結させて、戦時ということでロシア国民が直面していた多くの規制を解除し、民心を把握したいところだと思われます。

勿論、負け戦になるのは困る一方で、現在の戦況は必ずしも芳しくありません。ですから、政治的に失点にならない範囲、つまり、ドンバスの相当な地域を抑えている現状プラスアルファぐらいの国境線であれば、休戦に応じる可能性はあると思われます。

ということで、ロシアと中国には、「この戦争を早期に集結させる」ということのメリットということでは、とりあえず共通の利害がある、そう考えることができます。今回の習近平のモスクワ訪問については、「中ロ同盟の結束誇示」が目的だなどと、政治的に対立を煽る見方もあります。そうした要素はゼロではないにしても、単に「向こう側の結束」という見方だけをしていると、判断を誤るのではと思うのです。

この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 中国とロシアを引き離せ。ウクライナ戦争「停戦」に必要な3つの条件
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け