音楽史に残る派閥争いも結局「内向派」と「外交派」の争いと思う訳

 

シューマンの妻の著名なピアニスト・クララ・シューマンはワーグナーの派手で装飾の多い音楽を心底嫌悪したようです。なんでも許そうとするシューマンに対し、クララは好き嫌いをはっきりさせる人でした。ブラームスがワーグナー派の指揮者と協力しようとした時にも、クララが苦言を呈しています。

あらゆる人の長所を見出して、尊敬することを忘れないシューマンは、ワーグナーに対しても同様であった。しかし、クララは夫の意見に同感できず、「私はロベルトに同意できない。ワーグナーが劇的な構成力を持っていることは否定しないが、彼の音楽は音楽ではない。ワーグナーについては何もいわない方がよいと思う。私は、自分の主張を偽れないし、またこの作曲家に閃光のような共感すら感じられないから」

生々しい音、荒々しいタッチ、不自然な誇張された表現、そうしたものをクララは非音楽的なものとして嫌悪した。

クララはかつて「未来において、これらの音楽がすべて消滅しても、ブラームスの静かな美は残るだろう」といったことがあるが、二十世紀も半ばに近い今、彼女の予言はまさに実現した。ブラームスは現在世界各国で、最も多く演奏される作曲家の一人である。

よく彼女の手紙は音楽家の人間性や高貴さについて書いてますが、メンデルスゾーンやシューマンの音楽を聴くと、彼女がなぜ彼らを尊敬したかわかる気がします。

なので私、ブラームス派とワーグナー派の争いの根本には、こうした性格の違いもあったと思うのです。両者は多分一生理解しあえません。

無理やり付き合おうとすると大きな争いになってしまうので、やっぱりお互い付かず離れずで見ないふりするのがいいんじゃないかなと思います。

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文筆家・編集者。金融機関を経て95年アスキー入社。雑誌「MacPower」を経て以降フリーに。「ASAhIパソコン」「アサヒカメラ」編集者として主にIT業界を取材。1990年代よりマレーシア人家族と交流したのときっかけにマレーシアに興味を持ち11年以上滞在。現地PR企業・ローカルメディアの編集長・教育事業のスタッフなど経てフリー。米国の大学院「University of the People」にて教育学(修士)を学んでいます。 著書に「東南アジア式『まあいっか』で楽に生きる本」(文藝春秋)「子どもが教育を選ぶ時代へ」「日本人には『やめる練習』が足りていない」(集英社)「いいね!フェイスブック」(朝日新聞出版)ほか。早稲田大学法学部卒業。

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