議長国の資格なし。G7環境相会合で露呈したニッポンの周回遅れ

 

西村康稔経産相がやらかした「恥の上塗り」

ま、それはそれとして、完全に崖っぷちに立たされていて、今すぐに全廃しても間に合うかどうか分からないのが「石炭火力発電」なのに、議長国である日本が「アンモニア混焼によるCO2排出量の低減」などと「ぬるま湯」のようなファンタジーに終始しているのですからお話になりません。

ちなみに日本は、地球温暖化対策に後ろ向きな国、他国の対策の足を引っ張る国に与えられる不名誉な「化石賞」を2019年から2022年まで3連続で受賞していますが、その選定理由の1つが「アンモニア利用によって火力発電の延命を図ろうとしており、しかも海外へ輸出しようとしている」というものなのです。

そして、これだけでも呆れ返るのに、さらに開いた口が塞がらないのが、日本の原発依存度です。世界最悪レベルの原発事故を起こし、12年経った今も収束の目途も立っていないのに、いつの間にか「段階的廃止」だった計画が「原発の有効利用」の名のもとに「再稼働と新設」へと方向転換されてしまったのです。それも、国会の審議を経ずに、自民党政権の伝統芸の「閣議決定」だけで。

今回の会合でも、日本は恥も外聞も原発事故の反省もなく、「原発はエネルギー安保に重要」と主張しました。しかし、福島第1原発事故を受けて、会合当日の15日に「脱原発」を完了したドイツを始め、「脱原発」を進めているイタリアなどが強く反対したため、共同声明では主語を「私たち」でなく「原発を利用する国」に変更されました。

また、福島第1原発に溜まり続ける大量の処理水の海洋放出についても、日本はIAEA(国際原子力機関)による安全性の検証を「歓迎する」という文言を盛り込もうとしました。しかし、これもドイツなどが強く反対したため、共同声明では「支持する」という文言に変更されました。

皆さん、これ、どう思います?ドイツは福島第1原発事故を受けて「脱原発」を完了したと言うのに、その事故を起こした国の政権が「原発推進」だなんて…。世界の多くの国々が、唯一の戦争被爆国である日本の広島と長崎の悲劇を見て「核兵器禁止条約」に参加しているのに、肝心の日本は不参加、これと同じで、本当に恥ずかしいことです。

それなのに今回、さらに恥の上塗りをしてしまったのが、西村康稔経産相だったのです。西村経産相は会合後の会見で、採択された共同声明の内容について、「処理水の海洋放出を含む廃炉の着実な進展、科学的根拠に基づくわが国の透明性のある取り組みが歓迎された」と説明したのです。

そして、これに驚いたのが、西村経産相の隣りに座っていたドイツのレムケ環境相でした。先ほども書いたように、「処理水の海洋放出」については、日本が用意した「IAEAによる安全性の検証を歓迎する」という文言にドイツなどが強く反対したため、「歓迎する」は「支持する」に変更されていたからです。

今回、レムケ環境相は、会合前の13日に、福島県の浪江町や双葉町など、原発事故の被災地を視察しました。双葉町の「東日本大震災・原子力災害伝承館」を訪問し、原発事故の詳細や今も多くの住民が避難していることなど説明されたレムケ環境相は、「原発事故が地域の人々にいかに苦しみを与えたか明確に知ることができた」と述べました。

レムケ環境相は会見で、ドイツでは15日に「脱原発」が完了したことを報告してから、福島第1原発事故に言及しました。そして、「処理水の海洋放出」を「歓迎する」と述べた西村経産相の発言について、「東電や日本政府の努力には非常に敬意を払う」と前置きしつつも、「処理水の放出に関しては、歓迎するということはできない」と明言しました。これは、被災地や「伝承館」を視察して来て、今も苦しむ多くの人たちの思いを知っているレムケ環境相だからこその言葉だと思います。

この記事の著者・きっこさんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 議長国の資格なし。G7環境相会合で露呈したニッポンの周回遅れ
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け