トランスジェンダーの社員を「彼」と呼んだら訴訟に。パワハラ裁判の結果は?

 

労基署は、すべてパワハラとして認めました。

これらの行為は「SOGIハラ」と呼ばれ、パワハラの一種として禁止されています。

SOGIハラとは「相手の性的志向、性自認に関する侮辱的な言動を行うこと」です。

ここで実務的には注意すべき点があります。

一般的にはパワハラやセクハラでは、会社がきちんと対応していないことを問題視されることが多いです。例えば

・相談されてもまともに取り合わなかった
・加害者を指導しなかった
・そもそもパワハラ、セクハラがあったことを認めなかった

などです。

ただ、今回のケースでは会社は次のような対応をしていました。

・所属長は、女性として扱うよう部署の社員に指示を出していた

・本人、先輩社員、上司で3者面談を行い、先輩社員に対して言動を改めるように指導を行っていた
・(トランスジェンダーの社員が)先輩社員と業務上の関わりをもたなくても良いように職務の変更を行った

などです。私の目から見ると会社はできる対応はほぼしているように思えます。ただ、問題だったのはこの先です。

何か?

それは、「それでも、先輩社員は「〇〇君」呼びを止めなかった」ことです。このことが労災認定につながりました。

つまり、たとえ会社が「しっかり対処しました!」と言っても、そのパワハラ行為が続いていれば労基署は「そんなの認めん!」ということです。労災認定されたということは会社は安全配慮義務違反に問われる可能性もあります。

みなさんの会社ではいかがでしょうか。

パワハラに対する対策を、全くしていないところはおそらく無いでしょう。ただ、徹底はできているでしょうか?

例えば、管理職のみにパワハラ研修を行っているのであれば今後はそれを全社員に拡げる必要があるかも知れません。

パワハラ相談窓口の設置が法律で義務付けられましたが、その担当者はある程度の専門知識を持っているでしょうか。場合によってはその担当者への研修も必要になるかも知れませんね(知識不足による不適切な対応により、担当者が訴えられた裁判もあります)。

今一度、見直してみてはいかがでしょうか。

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【社員10人の会社を3年で100人にする成長型労務管理】 社員300名の中小企業での人事担当10年、現在は特定社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツを「わかりやすさ」を重視してお伝えいたします。 その知識を「知っているだけ」で防げる労務トラブルはたくさんあります。逆に「知らなかった」だけで、容易に防げたはずの労務トラブルを発生させてしまうこともあります。 法律論だけでも建前論だけでもない、実務にそった内容のメルマガです。

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【著者】 特定社会保険労務士 小林一石 【発行周期】 ほぼ週刊

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