かつては安眠の妨げになるとも言われた昼寝。特に遅い時間の仮眠は夜間の睡眠により影響を及ぼすとの説も耳にしますが、必ずしもそれは「万人に当てはまる」と断言できるものでもないようです。今回の無料メルマガ『精神医学論文マガジン』では、100名の高齢者を対象に行なった、昼寝や遅い時間の仮眠と夜間睡眠についての研究を紹介。その結果から明らかになったのは、実に意外な事実でした。
「遅い時間に眠ってしまうと夜眠れない」は本当か?
夜間にしっかり眠るためには、昼寝をせずに昼間の活動性を保つことが重要だと指導されるのが通常だと思われます。
高齢者においても同様で、特に夜間のせん妄(精神症状)を防ぐためにも昼間の覚醒を保つことが重要とされます。
今回は、昼寝と睡眠状態の関連を示した研究をご紹介します。
● Subjective and Objective Napping and Sleep in Older Adults: Are Evening Naps “Bad” for Nighttime Sleep?
(高齢者における客観的・主観的昼寝と睡眠状態の関連)
地域で生活する60~89歳の高齢者100人が対象になりました。
12日間、昼寝を含めた睡眠の記録と加速度計の装着を行い、主観・客観の両面から昼寝と睡眠状態との関連を比較しました。
結果として、以下の内容が示されました。
- 昼寝がなかったのは100人中、3人だけでした
- 昼寝のパターンは以下のように分けられました
昼間(午後2時くらい)だけの昼寝
昼間と夜(午後8時くらい)両方の昼寝(仮眠)
(夜間だけというパターンはありませんでした) - 2のパターンの方が、睡眠導入までの時間が短く、中途覚醒も少なくなっていました。
要約:『遅い時間の仮眠が睡眠の質を悪化させるということはないかもしれない』
少なくとも状況や体質によらず、全ての人に仮眠をしないように求めることに、睡眠状況の観点から意味はないのではないかと思われる結果でした。
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